皆さん、口腔(こうくう)がんとはどんな病気かご存じでしょうか?口腔がんの特徴や症状、そのがんの予防方法などについて、日本口腔外科学会理事長で、奈良県立医科大学 口腔外科 教授 桐田 忠昭 先生にお話を伺いました。
日本口腔外科学会と当社が連携して実施した口腔がんに関する認知度調査1)では、約80%が口腔がんについて聞いたことがあると回答しました。改めて、口腔がんとはどんな病気か教えてください。
桐田先生:「口腔がん」とは、口の中にできるがんで、舌、上下の歯茎(はぐき)、頬の内側、上あご、舌と下側の歯茎(はぐき)の間、唇にできます。口腔という部位は、「噛む」、「飲み込む」、「声を出す」など日常生活を送る上で重要な機能を持っています。
がんが発生した場所によって疾患名は違います。舌にできるがんは「舌(ぜつ)がん」、上下の歯茎(はぐき)にできるがんは「歯肉(しにく)がん」、頬の内側にできるがんを「頬粘膜(きょうねんまく)がん」、上あごにできるがんを「硬口蓋(こうこうがい)がん」、舌と下側の歯茎(はぐき)の間にできるがんを「口腔底(こうくうてい)がん」、唇にできるがんを「口唇(こうしん)がん」と呼びます。調査結果では「のど」に発生したがんも口腔がんの一種に含まれると回答された方もおられますが、実は「のど」にできるがんは「中咽頭(ちゅういんとう)がん」に分類されます。日本口腔外科学会のホームページでは、実際のこれらのがんの写真を掲載して、どういったがんであるかを説明しているので、ぜひご覧ください。
口腔がんの患者数はどれくらいなのでしょうか?また、症状について詳しく教えてください。
桐田先生:口腔がんは、頭頸部(とうけいぶ)がんの一種です。頭頸部がん全体の年間罹患数約49,000人2)のうち、口腔がんは約13,000人3)であり、約3割と一番多くを占めています。口腔がんの初期症状としては、しこり、治りの悪い口内炎、歯のぐらつきや入れ歯が合わなくなるなどがあげられます。また、自覚症状として最も多いのが口の中の痛みです。その痛みに気づいたときには、進行しているケースが多く、主な症状としては、舌を動かしづらい、口が開けにくい、飲み込みにくい、口臭が強くなる、あごの下や耳の下のリンパ節が腫れるなどがあります。調査結果によると、口の中に違和感があるときは、口腔(こうくう)外科を受診するのが良いと思う方が一番多く、次に、歯科(しか)でした。恐らく、口腔がんと聞いて「口」を想像されたと思います。
では、口腔がんの予防や早期発見はできるのでしょうか?
桐田先生:口腔がんの主な危険因子は、たばことお酒です。調査結果によると、喫煙が口腔がん発生の要因となる一つとして一番知られているようでした。
飲酒時の喫煙は、たばこに含まれている発がん性物質がアルコールによって溶けて口の中の粘膜に作用するため、リスクはより高くなると言われています。喫煙・飲酒を控えることが予防の第一歩になるでしょう。それ以外にも、口の中が清潔でなかったり、虫歯を放置したり、合わない入れ歯やかぶせ物による刺激なども要因として挙げられます。上記に示した通り、調査結果では、合わない入れ歯が口腔がんの要因となるということがあまり知られていませんでした。定期的なセルフチェックを行うことで、早い段階で口腔がんを発見でき、早期治療に繋がります。月に一回、以下のセルフチェックをお勧めします。
当社ウェブサイトでは、口腔がんを含む頭頸部がんに関する情報を掲載しています。また、11月には、8日の「いい歯の日」、15日の「口腔がんの日」と、口腔に関連する啓発日が2つあります。11月に向け、みなさんに、口にできるがんのことを知っていただくため、当社は日本口腔外科学会と口腔がんに関する情報を発信していきます。理解を深め、早期発見と予防を心がけていきましょう!
1) 公益社団法人 日本口腔外科学会と楽天メディカル株式会社によるオンライン調査を8月19日(金)~9月5日(月)に実施、回答総数95名
2) 厚生労働省健康局がん・疾病対策課 「平成31年全国がん登録 罹患数・率 報告」付表1.罹患数 口唇~その他および部位不明確の口唇、口腔および咽頭(口腔・唾液腺・咽頭)、鼻腔および中耳、副鼻腔、喉頭、甲状腺の合計値
3) 厚生労働省健康局がん・疾病対策課 「平成31年全国がん登録 罹患数・率 報告」付表1.罹患数 口唇、舌根<基底>部、その他および部位不明確の舌、歯肉、口腔底、口蓋、その他および部位不明確の口唇の合計値