世界頭頸部がんの日
7月27日は「世界頭頸部(とうけいぶ)がんの日」(World Head & Neck Cancer Day) です。2014年7月、米国で開催された頭頸部癌学会国際連合の第5回世界会議において、頭頸部がんに関する正しい知識や早期発見を目指して世界全体で広めることを目的として、7月27日を「世界頭頸部がんの日」として制定しました。1)
頭頸部がんとは?
日本では、年間約27,000人2)の方が頭頸部がんを発症しています。頭頸部がんは、頭から鎖骨までの範囲に含まれるがんの総称です(脳と目は除く)。頭頸部は大きく分けて鼻、口腔、咽頭、喉頭といった器官で構成されており、発生部位により、咽頭がん(上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん)、喉頭がん(声門がん、声門上がん、声門下がん)、鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞がんなど)、口腔がん(舌がんなど)、唾液腺がん、甲状腺がんなどの診断名がつきます。
これらの部位は呼吸や食事、発声など生活するうえで重要な機能と密接な関りがあり、がんの発生やその治療によってこれらの機能が損なわれたり、見た目が変化する可能性が大きいのが特徴です。頭頸部がん患者さんのQOL(Quality of Life:生活の質)は、がんの進行に伴う様々な症状や治療による副作用で大いに影響を受けます。
頭頸部がんは予防できる?
では、頭頸部がんを予防する方法はあるのでしょうか?頭頸部癌の多くは口腔、咽頭・喉頭領域や食道および肺に重複多発する傾向があり、さらに重要なことは喫煙と過度の飲酒がその発生の強い誘因として関わっていることが判明しています。喫煙する人の喉頭がんの発生率は、吸わない人の32倍になるそうです。また、日本人は、アルコールが代謝される過程で産生される、毒性の強いアセトアルデヒドを分解しにくい体質の人が多くみられます。この体質の人たちは、わずかな飲酒でもがん発症の危険性が増すことが明らかになってきました。このような体質でない場合でも、多量の飲酒自体が危険因子となります。3)4)
また、喫煙・飲酒以外にも、「口内の清掃不良」や「ムシ歯の放置」「合わない入れ歯や破れたかぶせ物などによる慢性的な刺激」「栄養不良」なども頭頸部がんの要因として挙げられています。歯磨きやうがいを習慣化し、口内を清潔に保つことも大切です。5)
日常生活において、飲酒や喫煙を控えたり、口内ケアをしっかり行っていくことが予防の第一歩となります。
気になる症状がある場合は病院へ!
頭頸部がんの症状は発生した部位により様々で、初期では自覚症状がみられない場合もあります。下記のような症状が、2週間以上続く場合は診察を受けられることをおすすめします。
咽頭:のどの違和感やしみる感じ、のみこみにくさ、耳のつまった感じ、首のしこり、声がれ、息苦さ6)
喉頭:声がれ、息苦しさ、のどの痛み、血痰、誤嚥(むせる)、首のしこり7)
鼻:鼻づまり、悪臭のある鼻汁、鼻出血、歯痛、頬の腫れ、視力障害などの症状、とくに左右の片側だけにこれらの症状があるときには、注意が必要8)
口:2週間以上治らない口内炎、腫れ、しこり、発赤、白色変化、ただれ、出血、歯のぐらつき5)
令和3年3月11日に行われた厚生労働省の「がん対策推進協議会」で、新型コロナ感染症の流行でがん検診や治療の受診控えが起きていると発表されました。9) 頭頸部がんの定期検診は行われていませんが、早期発見のためにも、気になる症状がある場合は決して放置せず、かかりつけ医にご相談ください。
ヴィッセル神戸の選手との疾患啓発ポスター
楽天メディカルジャパンは、ヴィッセル神戸の選手(アンドレス・イニエスタ選手、山口蛍選手、古橋亨悟選手)と共に、頭頸部がん認知向上を目指してポスターを作成しました。7月より、全国各地の医療機関でポスターが掲載されます。「ガン克服。生きる。」というメッセージを胸に刻んだヴィッセル神戸の選手たちは、サッカーのプレーを通して、頭頸部がんをはじめ、すべてのがん患者さんに勇気と希望をお届けしたいと願っています。楽天メディカルは「がん克服」をミッションとして、一人でも多くのがん患者さんが、より良い治療にアクセスできる社会の実現を目指します。
学会による新しい活動について「頭頸部外科月間」
「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会」では、今年から7月を「頭頸部外科月間」とし、「日本頭頸部外科学会」とともに、日本における頭頸部がん予防と啓発活動を行います。詳細はこちら(https://bit.ly/3enZycl)をご覧ください。
【記事・ポスター監修】神戸大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野 丹生健一 先生
参考: