2021年7月27日、世界頭頸部がんの日に、頭頸部がんやその治療法などを正しく知ってもらうことを目的として、楽天メディカルジャパンは「知ってほしい耳・鼻・のど・口・舌のがんのこと」と題したオンライン市民公開講座を開催し、約250名の方にご参加いただきました。当日は、ヴィッセル神戸の郷家選手、山口選手、イニエスタ選手からメッセージ動画も届きました。この講座では、日本頭頸部癌学会理事長で神戸大学医学部附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 教授・診療科長の丹生健一先生に、頭頸部がんに対する標準治療、新しい治療法、さらには自分に合った治療法の見つけ方まで、わかりやすくご説明いただき、質疑応答も行われました。
頭頸部がんとは
まず初めに、頭頸部と言われる各部位の説明がなされたあと、頭頸部がんと総称される、舌がんをはじめとした口腔がん、上咽頭・中咽頭・下咽頭がん、喉頭がん、上顎洞がん、唾液腺がんの症状について説明されました。いずれのがんも、口内炎やのどの違和感など「がん」とは気づきにくい症状も多く、初期症状が無い場合もありますが、症状が2週間以上続くときや違和感を覚えるときは耳鼻咽喉科を受診するようにとのことです。
頭頸部には、呼吸や食事などの生命を維持する機能や、会話など社会生活を送るために重要な機能が多く、頭頸部がんの治療後の社会生活への影響も大きい場合が多いので、どのような治療が自分に合うのかを主治医や家族など周りの人とよく相談しながら治療を進めていくことが大切だと、丹生先生はお話されました。
また、丹生先生は、治療後の生活について次のように説明されました。
・治療後のリハビリやトレーニング、補助器具の使用などについても、医師・看護師・言語聴覚士などと相談しながら行っていきます。
・会話の機能を補うために、食道発声や電器喉頭、ボイスプロテーシスを使用する方法(気管と食道の間に小さなチューブを埋め込んで声を出す)があります。
・治療後の外見への影響を小さくするために、体の他の部位から皮膚や筋肉などを移植して外見を回復させる再建手術の技術も向上してきています。
標準的な治療法から最新の治療法まで
次に、頭頸部がんの治療法について、ご説明いただきました。
・現在、標準治療とされているのは、外科手術・放射線治療・薬物治療の3つです。最近では、進行がんに対して、放射線治療と、薬物治療の一つである化学療法を組み合わせた化学放射線療法が行われることが多くなってきました。化学放射線療法は、原発部位と転移がんを同時に治療できますが、単独治療に比べると副作用も強くなります。
さらに、新たな治療法として、粒子線治療・BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)・イルミノックス治療(光免疫療法)の3つの治療法も説明されました。
・粒子線治療は、陽子や重粒子の原子核を加速してがん細胞に打ち込む治療法です。粒子線療法は、通常のX線による放射線治療に比べて、副作用や照射回数を少なくすることができる放射線治療です。
・BNCTは、中性子とホウ素の反応を利用して、がん細胞だけを選択的に破壊する治療法です。がん細胞がホウ素薬剤を取り込んだところで、患部に中性子線を当てると、中性子線がホウ素とぶつかり放射線が発生します。放射線が飛ぶ距離は細胞1個分程度なので、がん細胞をだけを破壊する、正常な細胞にはほとんど影響がないと言われています。
・イルミノックス治療(光免疫療法)は、米国国立がん研究所の小林久隆先生らが開発した「がん光免疫療法」が基になっています。「薬剤の投与」と「特定の波長の光照射」を組み合わせた治療法です。薬剤を投与した後、患部に特定の波長の光を当てると、薬剤が光に反応して病気の原因となる細胞が死滅します。
これらの新しい治療は、まだ施術例が少ないなどデータが少ないこともあり、現段階ではまずは標準治療が優先されます。
自分に合った治療法を受けるには
最後に、自分に合った治療法を受けるために大切なことをご説明いただきました。
・まずは早期にがんを発見することが重要です。2週間以上経っても治らない口内炎やのどの違和感、飲み込みの悪さ、声のかすれ、首に痛みのない硬いしこりがある場合は、ぜひ耳鼻咽喉科を受診して、提案された必要な検査をぜひ受けてください。正しい診断、早期発見に努めましょう。がんの種類やがんと診断されたときの腫瘍の大きさ、病期、年齢、持病、合併症、お仕事、家庭環境などの社会的背景などを考慮して、どの治療が最適かは変わってきます。痛みなどの副作用も人によって異なります。自分にはどの治療法が合うのか、よく主治医と相談することをお勧めします。
・最近はよく標準治療という言葉が使われますが、標準治療とは、厚生労働省から承認を得た治療のうち、科学的根拠に基づいた最も推奨される治療です。手術、放射線、化学療法などが該当します。
・また、ご自分の治療に対して最良の方法を選択するために、主治医以外の医師の意見を聞く「セカンドオピニオン」という方法があります。大事な家を建てるなら相見積りを取るのは当たり前で、それと同じように皆さんの大切な命の治療に対して最良の方法を選択肢するために主治医の先生以外の先生から意見をきく、近年ではセカンドオピニオンは一般的に行われており、セカンドオピニオンをとることについて主治医に相談することは問題ありません。なお、セカンドオピニオンをとるための受診は公的医療保険が適用されない自費診療であるため、病院によって費用が異なることをご注意ください。
・標準的な治療以外の治療を受ける場合には、治験に参加するという方法があります。患者さんに適した治験がある場合に主治医から紹介されることもありますが、参加をするかしないかは患者さんご本人の意思で決めることができます。ご自分で治験を調べる場合は、主治医に参加可能な治験があるか相談してみましょう。臨床試験情報(一般財団法人日本医薬情報センター/JAPIC)や臨床研究登録情報検索ポータルサイトなどの検索サイトもあります。治験への参加についても、主治医とよく相談してください。
・インターネットで情報を調べる場合は、補足的にわからない言葉を調べるようにしましょう。病院・学会・製薬会社のホームページで情報をご確認ください。検索したときに、保険適用外の民間療法を扱っているクリニックが検索結果の上位に来ることも多いので注意が必要です。
・受診する医療機関を探す場合は、特定非営利活動法人日本頭頸部外科学会のホームページで、治療・手術件数の多い病院や「専門医」の資格のある医師を検索してみてください。
頭頸部がんの患者団体について
この市民講座には、以下の頭頸部がん患者団体に所属する患者さんやご家族の方にもご参加いただくことができました。各団体は、患者さんやご家族向けに情報交換の場を設けたり、学習会や講演会を開催する活動などを行っています。コロナ禍で対面でのイベントの開催は難しいようですが、オンラインイベントにするなど工夫されているようです。
TEAM ACC代表の浜田様は、「世界頭頸部がんの日」のポスターを作成し、疾患啓発活動を行っていました。
楽天メディカルジャパンは、今後もがん患者さんやご家族の皆さまのお役に立つような情報をお届けするため、イベント等を開催していきます。最新情報は、当社ホームページにてお知らせいたします。