2021年10月1日、第80回日本癌学会学術総会において、一般社団法人CancerXによる「CancerX 日本癌学会 特別企画セッション〜立場を超えて、多種多様ながん課題の共有・解決へ〜」が開催され、楽天メディカルジャパン株式会社代表取締役会長である三木谷浩史がパネリストとして登壇しました。異なる分野・立場でがんに関する社会課題に取り組んできたパネリストたちが、それぞれの経験や取り組みをもとに、よりよい「がん共生社会の実現」に向けて、立場を超えて協力し、課題を解決する重要性について意見交換しました。
パネリスト
- 笠井 信輔 氏(フリーアナウンサー)
悪性リンパ腫で4か月半の入院生活を経験、病室にもインターネット環境が必要だと痛感し、有志とともに団体「#病室Wi-Fi協議会」を立ち上げる。
- 鈴木 美穂 氏(認定NPO法人マギーズ東京 共同代表理事 / CancerX 共同発起人)
乳がん闘病中に自身が欲しかったもの・足りないと感じたものを作りたいと、若年性がん患者団体「STAND UP!!」や「マギーズ東京」、「CancerX」を立ち上げる。
- 三木谷 浩史 (楽天メディカル社 副会長 兼 CEO/楽天メディカルジャパン株式会社 代表取締役会長)
父親のがんをきっかけに開発に携わることになった「イルミノックス治療(光免疫療法)」を通じて、がん克服を目指す。
- 三原 じゅん子 氏(参議院議員)
子宮頸がんを経験した政治家として、HPVワクチンの積極的勧奨の再開や、がん患者・サバイバーへの支援、がん教育の普及などを推進している。
座長
- 上野 直人 テキサス大学MDアンダーソンがんセンター 教授(CancerX 共同代表理事・共同発起人)
腫瘍内科専門医・がんサバイバー・研究者の3つの立場から、がんを取り巻く医療的・社会的な多様なテーマについて考え、課題を共有し、「コレクティブ・インパクト」の実現を通じた解決を目指している。
- 三嶋 雄太 筑波大学 医学医療系 助教 / 筑波大学附属病院 再生医療推進室 副室長(CancerX 理事・共同発起人)
iPS細胞技術と遺伝子改変免疫細胞を組み合わせた次世代型がん治療製品の実用化を目指した研究を行っている。
パネルディスカッションにおいては、笠井さんは、「病室Wi-Fiの設置活動を進めるにあたり、異なる分野の人が集まり各自の力を活かしたことで望む結果により早く近づいた」と話し、課題解決のための異分野協業の重要性を訴えました。また、Wi-Fiに関する科学的な誤解や治療と関係ないエンターテイメントというイメージがあることにも触れ、「エビデンスを収集する新しい研究のニーズを知ってほしい」と説明しました。
鈴木さんは、「自分の納得のいく治療法を、じっくり耳を傾けて聞いてもらって相談しながら探すということが病院では難しい」とし、「患者さんやご家族、ご友人の方が、看護師や心理士などに安心して話せるマギーズ東京のような場は意味がある」と話しました。また、「がんと共に生きていく人が増えている時代だからこそ、治療とともに社会も進歩しなければいけない、エビデンスのある正確な情報を必要な人に適切に届けられる仕組みを、ぜひ一緒に作っていっていただきたい」と訴えました。
三木谷は、「自分はがんの専門家ではないが、イルミノックス®プラットフォームに基づく治療法の可能性に賭けベンチャー企業の楽天メディカルに投資した、こういったソーシャルアントレプレナーは重要だと思う」と語りました。また、「がん治療の技術開発はすさまじいスピードで行われているが、日本での新薬承認プロセスが長期間の審査、開発費の増大に繋がっている」と話し、「患者さんのベネフィットのためにも行政には海外での治験データのさらなる活用など、承認プロセスの効率化についても考えてほしい」と述べました。
三原さんは、笠井さんの病室Wi-Fi協議会の活動に自身も関わり、病室Wi-Fi設置がコロナ対策の補助金に組み込まれた例を挙げ、「人を動かすのは人のパッションしかない、熱意が道を拓いていくと思う」と語りました。また、今の日本に足りていないのは、がんや健康に関する教育だとし、「法制度や体制も整えていくがインフルエンサーの皆様にも声を上げてほしい」と話しました。
座長の上野さんは、「医療者や研究者は社会課題に関する新しいスキルを自分で身につけるのは大変なので、外に出て外の社会の変化を感じながら研究を進めていくということが重要だと思う」と話しました。そして、「いろいろな業種の人、これまででは考えられない分野を掛け合わせていく、今後もこのコンセプトが研究者や医療業界に求められる」とし、「このようないろいろな人が出会う場で、がんの人もそうでない人も関わっていただければと思う」と総括しました。
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