光免疫療法に関する独占的ライセンスのもと、がん細胞に対し選択性に優れたがん治療法の開発を進める楽天メディカル社 (本社:米国 カリフォルニア州 サンマテオ、会長 兼 最高経営責任者: 三木谷 浩史)は、スペイン バルセロナで開催されている欧州臨床腫瘍学会 (ESMO) にて (2019年9月27日から10月1日)、RM-1929による光免疫療法の、日本で実施した第Ⅰ相臨床試験、および米国で実施した第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験における新たな解析結果を発表しました。発表内容は、探索的バイオマーカー、安全性、薬物動態(PK)、および免疫原性に関わる結果で、局所再発頭頸部癌患者を対象としたRM-1929による光免疫療法の安全性と抗腫瘍効果について評価されました。
2019年ESMOでのポスタープレゼンテーション発表の詳細は、以下の通りです。
「局所再発頭頸部癌患者を対象としたRM-1929による光免疫療法の総合的な安全性、薬物動態(PK)および免疫原性のデータ」(Abstract 2954)
発表者 :ジェニファー M ジョンソン, MD, PhD, FACP、トーマス ジェファーソン大学医学部腫瘍学部アシスタントプロフェッサー、腫瘍内科およびアソシエイトプログラムディレクター、血液学および医学腫瘍学特別研究員。
結論として、2019年の米国臨床腫瘍学会 (ASCO)で報告された、米国での第Ⅱa相臨床試験から得られた臨床的に意義のある結果を踏まえると、今回報告された日本での第Ⅰ相および米国での第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験における安全性プロファイル、PKの評価結果は、現在行われている局所再発頭頸部癌患者を対象としたASP-1929の国際共同第Ⅲ相臨床試験を後押しする内容でした。主たるポイントは以下となります。
- 上記2試験で治療を受けた患者41名のうち、17名に1つ以上の重篤な有害事象(SAE)が発現し、うち5名でのSAEは本治療に関連していると考えられました。しかし、大部分が治療部位に起きる局所的なものでした。
- 上皮成長因子受容体 (EGFR)の飽和が達成されることが予測されるRM-1929 640 mg/m2 のAUC (血中薬物濃度時間曲線下面積)およびT1/2 (消失半減期)の結果が得られました。RM-1929 (サイクル2-4)の約4週間間隔での反復投与でも、サイクル1の薬物動態と同等であり、抗薬物抗体の発現が低いことが示されました。
「RM-1929による光免疫療法を受けた局所再発頭頸部癌患者のがん細胞内および周辺部の探索的バイオマーカー解析」(Abstract 3725)
発表者 :ジャック ブイ, MD, PhD, カリフォルニア大学サンディエゴヘルス 病理学者。
局所再発頭頸部癌患者を対象とした米国での第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験では、RM-1929による光免疫療法の免疫バイオマーカーが評価されました。その結果、一部の症例で、治療部位における効果の有無に関わらず、治療後に免疫活性の潜在的な兆候が見られました。主たるポイントは以下となります。
- 12名中8名において、RM-1929 による光免疫療法は、がん細胞および免疫細胞におけるPD-L1 発現の誘導に関連していました。
- 治療前及び治療後の生検の結果、この12名の残存したがん細胞においてEGFRの発現の維持が確認されており、さらなる光免疫療法の治療の可能性の対象となり得ることが示されました。
- 18名の患者のうち15名において、末梢血の免疫表現型検査を実施した結果、治療後の自然免疫および適応免疫の活性化の可能性が示唆されました。
楽天メディカル社 バイスプレジデント 臨床開発本部長であるJeannie Houは、次のように述べました。「今回の解析結果により、楽天メディカル社が開発する光免疫療法の安全性とPKデータがさらに明確になり、光免疫療法の潜在的な免疫活性に関する可能性を示しました。このことにより、今後、他のがん免疫療法との併用の可能性が開かれます。現在ASP-1929 による国際共同第III相臨床試験が進行中です。これは新しい治療法を確立するために重要なステップであり、現在治療法が限られた頭頸部がんと闘う患者さんに対して、新たな治療選択肢の提供に繋がると信じています。」
※ RM-1929とASP-1929は、同一の有効成分からなる薬剤です。
楽天メディカル社について
楽天メディカル社(本社:米国カリフォルニア州 サンマテオ)は、独占的ライセンスを有する抗体複合体を用いた光免疫療法(PIT)プラットフォームをもとにした、がん細胞に対し選択性に優れた治療法を開発しているバイオテクノロジー企業です。私たちは、がんを克服するというミッションのため、治療法の研究開発から世界中のがん患者さんへ治療法を届けるまでを一貫して実現することを目指しています。現在約200名の社員を擁し、米国本社に加え、日本、ドイツ、オランダ、台湾と、世界5カ国に8拠点を構えております。なお楽天メディカルジャパン株式会社は、楽天メディカルの日本法人です。
光免疫療法(PIT;Photoimmunotherapy)について
光免疫療法は、抗体によりがん細胞を選択的に標的化し、レーザーによってがん細胞を速やかに壊死させる治療法です。これは、生物学と物理学の双方のメカニズムを組み合わせた革新的な方法です。がん細胞を正確かつ迅速に壊死させる一方で、正常組織にはわずかな影響しか及ぼさないと考えられます。
ASP-1929/RM-1929について
2013年以来、楽天メディカル社は、独占的ライセンスを有する抗体複合体を用いた光免疫療法プラットフォームをもとにした、新しいがん治療法を開発してきました。セツキシマブとIRDye®700DX の複合体であるASP-1929は、頭頸部がん、食道がん、肺がん、結腸がん、すい臓がんなど様々な種類の固形がんに発現するがん抗原、上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とします。ASP-1929は、がん細胞と結合後、独占的ライセンスをもつレーザー機器と光ファイバーにより照射された非熱性赤色光により、局所的に活性化されます。この治療法は、がん細胞を標的としており、周囲の正常な組織に対しての影響は極めて限定的と考えられます。楽天メディカル社は、単独療法および他の薬剤との併用療法の臨床試験を行い、製品化を目指します。
ASP-1929は、未承認薬であり、実際に治療を受けることはまだ出来ません。現在、国内外において「頭頸部がん」「食道がん」の患者さんを対象に臨床試験が実施されています。
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