- 今まで光照射が難しかった部位の皮膚や粘膜に対して、光照射が可能に -
楽天メディカル株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役会長:三木谷 浩史/以下、楽天メディカル)は、頭頸部アルミノックス治療に用いるBioBlade®フロンタルディフューザー(以下、フロンタルディフューザー)などと併用し、同ディフューザーを照射部位まで誘導する医療機器「BioBlade®ディフューザー用ガイド管」(以下、ガイド管)の販売を開始しました。
製品外観:BioBlade®ディフューザー用ガイド管 | 照射イメージ画像 |
ガイド管の長さは、ショートタイプの110mmとロングタイプの180mmの2種類があります。ガイド管を用いることで、口腔や咽頭の一部の部位や喉頭など、フロンタルディフューザー単体では安定した光照射が難しかった腫瘍に対しても、光照射が行いやすくなり、治療可能部位の拡大が期待されます。
頭頸部アルミノックス治療は、頭頸部がんに多く発現する上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に集積する医薬品「アキャルックス®点滴静注250㎎」と光照射に用いるBioBlade®レーザシステムによる治療です。フロンタルディフューザーは、先端からレーザ光を照射し、皮膚や粘膜に広がる表在性病変に使用します。マージンを含めた円形の照射範囲(直径17から38mm)を確保するために距離と角度を維持しながら約5分間、フロンタルディフューザーを保持する必要があり、部位によってはこの距離や角度を確保・保持することが難しい場合がありました。本治療を提供いただいている医療従事者の皆さんからご意見・ご協力をいただきながら、それらの部位に対してより光照射が行いやすくなるようガイド管の開発を進めてきました。
藤田医科大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の楯谷 一郎医師は次のように述べています。「下咽頭・喉頭・舌根(舌の付け根部分)・頬粘膜(頬の内側の粘膜)など一部の部位に対して、フロンタルディフューザー単体では、照射距離の確保や適正な角度の保持が難しい場合がありました。それを解決するため、楽天メディカルは『BioBlade®ディフューザー用ガイド管』の開発を進め、当院で同ガイド管を用いた適正な照射を評価するための試験を行いました。本試験の結果、形状を彎曲(わんきょく)させることができる本ガイド管を用いることで、そういった部位に対しても光照射が可能となることが示唆され、治療可能部位の拡大が期待されます」
鳥取大学医学部附属病院 頭頸部診療科群(耳鼻咽喉科・頭頸部外科)の藤原 和典医師は次のように述べています。「今まで、舌根(中咽頭がん)に対しては、腫瘍にニードルカテーテルを刺して治療を行う組織内照射のみでした。ガイド管が登場したことで、同部位に対して経鼻的なアプローチによる表面からの新しい光照射方法の可能性が考えられ、さらなる治療技術の向上が期待できます」
岡山大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科の牧野 琢丸医師は次のように述べています。「下咽頭がんに対して、今まではフロンタルディフューザーによる光照射が難しかったですが、ガイド管を用いることで、同ディフューザーを病変に誘導しやすくなり、適正な照射が可能になるケースが増えると思われます。一人でも多くの患者さんにお届けできるようになることを嬉しく思います」
2020年9月に、アキャルックス®とBioBlade®レーザシステムは「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能・効果とし、厚生労働省より製造販売承認を取得しました。2021年に、当該製品の販売を開始し、現在、42都道府県の100以上の医療機関※で本治療の提供が可能となり、累計約350回(8月末時点)の治療が実施されました。
楽天メディカルは、今後も、本治療を提供いただいている医療従事者の皆さんと二人三脚で製品開発・改良を行い、より多くの頭頸部がん患者さんに本治療をお届けできるよう邁進してまいります。
※楽天メディカルの患者さん・ご家族向けウェブサイトの「治療が受けられる施設」には、掲載許諾をいただいた医療機関のみ掲載しています。今後、許諾が得られた医療機関に関しては、随時、掲載予定です。
<製品概要>
楽天メディカル株式会社について
楽天メディカルは、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカル社は、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社を構える米国に加え、日本、オランダ、台湾、スイス、インドの世界6カ国に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、楽天メディカル社(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/をご覧ください。
アルミノックス™プラットフォームについて
アルミノックス™プラットフォームは、治療技術基盤の名称であり、米国国立がん研究所の小林久隆先生らが開発したがん光免疫療法が基となっています。同プラットフォームは、医薬品、医療機器、医療技術、その他周辺技術を総合的に利用した技術基盤であり、楽天メディカル社は、これに基づき製品や治療法の開発を進めています。同プラットフォームを用いた治療は、「薬剤の投与」と「光の照射」の 2 段階で構成されます。薬剤は、光感受性物質 (光に反応する物質) と、キャリア (特定の細胞に選択的に集積する成分) から組成される複合体です。同薬剤を投与し、特定の細胞に選択的に集積させた後、その細胞に特定の光を照射することで光感受性物質を活性化させ、生化学・物理学的プロセスにより、特定の細胞を壊死させ、あるいは、排除します。
アキャルックス®点滴静注250㎎について
アキャルックス®点滴静注250㎎は、キメラ型抗ヒト上皮成長因子受容体 (EGFR) モノクローナル抗体 (IgG1) であるセツキシマブと光感受物質である色素IRDye® 700DX を結合させた抗体-光感受性物質複合体からなる点滴静注用の注射剤です。アルミノックス™プラットフォームを基に開発された最初の医薬品で、一般名はセツキシマブ サロタロカンナトリウム (遺伝子組換え) です。
BioBlade®レーザシステムについて
BioBlade®レーザシステムは、アキャルックス®点滴静注250㎎と組み合わせて使用するレーザ装置です。レーザシステムは、BioBlade®レーザ、必要な付属品、ディフューザー及びニードルカテーテルにより構成されます。ディフューザーは、照射を行うための補助器具で、光ファイバーの前方から照射を行う表面照射用のフロンタルディフューザーと、光ファイバーの側面から照射を行う組織内照射用のシリンドリカルディフューザーの2種類があります。ニードルカテーテルは、組織内治療において、シリンドリカルディフューザーを導入するために使用します。
頭頸部(とうけいぶ)がんについて
日本では、年間約49,000人*の方が頭頸部がんを発症しています。頭頸部がんとは、頭から鎖骨までの範囲に含まれるがんの総称です(脳と目は除く)。頭頸部は大きく分けて鼻、口腔、咽頭、喉頭といった器官で構成されており、発生部位により、咽頭がん(上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん)、喉頭がん(声門がん、声門上がん、声門下がん)、鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞がんなど)、口腔がん(舌がんなど)、唾液腺がん、甲状腺がんなどの診断名がつきます。この頭頸部と呼ばれる部位には、呼吸や食事など人間が生きるうえで必要な機能、さらには発声、味覚、聴覚など日常生活に重要な機能が集中しています。これらに障害が起きるとQuality of Life (QOL: 生活の質)に影響を及ぼすため、がんを治すための根治性とQOLのバランスを保った治療法が必要とされています。