- アンメットニーズの高い頭頸部がんに対する新たな治療選択肢となる可能性
楽天メディカル社(本社:米国 カリフォルニア州 サンディエゴ/以下、楽天メディカル)は、抗EGFR抗体-光感受性物質複合体「ASP-1929」を用いたアルミノックス治療(光免疫療法)の局所再発頭頸部扁平上皮がんに対する国際共同第Ⅲ相臨床試験(ASP-1929-301試験、ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03769506、CTRI Identifier:CTRI/2023/05/052728)について、インドにおいて登録患者への治療が開始されたことをお知らせします。ASP-1929-301試験は、現在、米国、インド、台湾などの国・地域で進行中で、計275名の患者を登録する予定です。インドでは、同国を代表する6つの医療機関が本試験に参加しており、2023年8月に最初の登録患者への治験治療が実施されました。
インドでは、本試験の進捗に伴いアルミノックス治療への関心が高まっており、2023年12月22日~24日にインド西部ダマンで開催された第23回インド頭頸部腫瘍学会総会(The 23rd National Conference of Foundation for Head and Neck Oncology)において、本治療に精通する日本の医師2名による招待講演が行われました。詳細はプレスリリースをご覧ください。
インドは頭頸部がん患者が多いことで知られており、毎年20万人以上の方が新たに頭頸部がんと診断され、その数は世界全体の新規頭頸部がん患者数の約25%を占めます1。患者数の多さに加え、病状が進行してから受診するため予後不良となるケースが多いことも知られています2。インドの頭頸部がん治療医は、病状が進行した患者さんを多く抱えることとなり、治療選択肢も限られてしまいます。手術、放射線、化学療法などいずれも広く使われていますが、さらなる治療選択肢が必要とされています。
Amrita Institute of Medical Sciences and Research Centre (Kochi) におけるASP-1929-301試験の治験分担医師であるSubramania Iyer K.氏は、ASP-1929-301試験への参加にあたり楽天メディカルが2023年7月に実施したインタビューで以下のように述べています。「アルミノックス治療は革新的な治療モダリティであり、インドで最も患者数の多い頭頸部がんに対するこれまでにない新たな治療選択肢になる可能性があるものとして期待しています」
ASP-1929-301試験の概要
国際共同無作為化オープンラベル第Ⅲ相臨床試験であるASP-1929-301試験は、過去に少なくとも2種類以上の治療(うち少なくとも1種類は全身治療)で効果が得られず、外科手術や放射線治療を受けられない局所再発頭頸部扁平上皮がん患者を対象に、ASP-1929を用いたアルミノックス治療(光免疫療法)の有効性および安全性を評価します。患者は無作為にASP-1929群または治験担当医が選択する全身療法群に割り付けられます(2:1の割合)。主要評価項目は、無増悪生存期間(Progression-Free Survival)と全生存期間(Overall Survival)で、主要な副次評価項目は客観的奏功率(Objective Response Rate)です。
- Ferlay J, Ervik M, Lam F, Colombet M, Mery L, Piñeros M, Znaor A, Soerjomataram I, Bray F (2020). Global Cancer Observatory: Cancer Today. Lyon, France: International Agency for Research on Cancer. Available from: https://gco.iarc.fr/today, accessed Dec 13, 2023
- Kulkarni MR. Head and Neck Cancer Burden in India. Int J Head and Neck Surg 2013;4(1):29-35 https://www.ijhns.com/doi/pdf/10.5005/jp-journals-10001-1132
楽天メディカル社について
楽天メディカル社は、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカル社は、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社がある米国に加え、日本、台湾、スイス、インドの世界5カ国に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、楽天メディカル社(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/をご覧ください。
アルミノックス™プラットフォームについて
アルミノックス™プラットフォームは、治療技術基盤の名称であり、米国国立がん研究所の小林久隆先生らが開発したがん光免疫療法が基となっています。同プラットフォームは、医薬品、医療機器、医療技術、その他周辺技術を総合的に利用した技術基盤であり、楽天メディカル社は、これに基づき製品や治療法の開発を進めています。同プラットフォームを用いた治療は、「薬剤の投与」と「光の照射」の 2 段階で構成されます。薬剤は、光感受性物質 (光に反応する物質) と、キャリア (特定の細胞に選択的に集積する成分) から組成される複合体です。同薬剤を投与し、特定の細胞に選択的に集積させた後、その細胞に特定の光を照射することで光感受性物質を活性化させ、生化学・物理学的プロセスにより、特定の細胞を壊死させ、あるいは、排除します。
ASP-1929について
楽天メディカル社がアルミノックス™プラットフォームを基に開発した最初の薬剤であるASP-1929(一般名:セツキシマブ サロタロカンナトリウム)は、抗体であるセツキシマブに光感受性物質である色素IRDye® 700DXが結合した抗体-光感受性物質複合体で、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に集積することが確認されています。EGFRは、頭頸部がん、乳がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん、すい臓がんなど様々な種類の固形がんに発現していることが知られています。ASP-1929ががん細胞に集積した後、波長690 nmのレーザ光を専用のレーザ照射システムを用いて照射することにより、ASP-1929が局所的に励起され光化学反応を起こします。これにより細胞膜が傷害されたがん細胞が選択的に壊死すると考えられています。本剤を用いたアルミノックス治療は、2018年1月に米国食品医薬品局からファストトラックに指定され、現在局所再発頭頸部扁平上皮がんの国際共同第Ⅲ相臨床試験を実施しています。日本において、先駆け審査指定制度の対象品目として指定され、かつ条件付き早期承認制度の適用のもと申請を行い、2020年9月に「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能または効果とする製造販売承認を厚生労働省から取得しています。日本以外の規制当局による承認は受けておりません。