- 実臨床および非臨床での知見が、インド最大の頭頸部領域の学会で発表された
楽天メディカル社(本社:米国 カリフォルニア州 サンディエゴ/以下、楽天メディカル)は、2023年12月22日~24日にインド西部ダマンで開催された第23回インド頭頸部腫瘍学会総会(The 23rd National Conference of Foundation for Head and Neck Oncology/以下、FHNO 2023)において、アルミノックス治療(光免疫療法/以下、本治療)の実臨床での実施経験が豊富で本治療のさらなる発展に向けた研究でも実績のある2名の医師が日本から招待され、三つの講演が行われましたので、お知らせします。講演概要は以下の通りです。
FHNO 2023でのアルミノックス治療に関する招待講演の概要(3演題)
演題名: Photoimmunotherapy for Lower Gingival Cancer
発表者: 西川大輔 医師(愛知県がんセンター 頭頸部外科部)
セッション名: INVITED VIDEOS
日時: 2023年12月22日 午前8:00-9:00(うち5分)
放射線治療歴を有する下顎歯肉がん患者に対して本治療を行ったケースを実例として示し、本治療の実臨床における患者選択の考え方およびニードル穿刺や光照射などの治療手技について動画で説明した。また、術後に発現した浮腫への対応や、腫瘍縮小に伴い発現した瘻孔の時間経過など、有害事象の管理についても紹介した。
演題名: Photoimmunotherapy for Recurrent Head and Neck Cancers - Japanese experience
発表者: 西川大輔 医師(愛知県がんセンター 頭頸部外科部)
セッション名: RECURRENT & METASTATIC DZ
日時: 2023年12月22日 午後3:00-4:30(うち15分)
本治療の症例紹介を中心とした実臨床での治療成績と安全性に関する情報、免疫応答に関する探索的研究結果などを紹介した。愛知県がんセンターで2021年1月~2023年12月に15人の患者に実施した26回の治療では、概ね良好な治療成績が得られた。また、同センターで5人の患者に実施した7回の治療において、治療後の末梢血で免疫応答を示唆するdamage-associated molecular patterns(DAMPs)の放出やケモカインの産生が確認され、本治療により免疫原性細胞死がヒトにおいても誘導できる可能性が示された1。本治療は、現在、疼痛・浮腫・瘻孔・光線過敏症などの有害事象に対する特別な配慮のもと、再発頭頸部がんに対する局所治療の最後の治療選択肢として実施されている。
演題名: Near-infrared Photoimmunotherapy: Translational research and clinical application
発表者: 岡田隆平 医師(東京医科歯科大学病院 頭頸部外科)
セッション名: DR SUDHIR BAHADUR SCIENCE SYMPOSIUM
日時: 2023年12月24日 午前8:30-9:30(うち15分)
実臨床においてEGFRを標的とした本治療を下咽頭がんに実施した症例では、4回の治療を受ける中で腫瘍の縮小が確認されたこと、最終的に病状進行と診断されたが、1年間は本治療のみで病状をコントロールできたことなどを紹介した。治療成績のさらなる向上のために行った非臨床研究のデータも紹介した。抗PD-1抗体と腫瘍細胞を標的とする光免疫療法(PIT)との併用に関するマウスでの研究において、併用群ではコントロール群や単独治療群と比べて腫瘍増殖の有意な抑制と生存期間の有意な延長が確認された2。また、CD25を標的とするPITにより腫瘍微小環境内のTregを局所的に排除することで、免疫系の活性化を示唆するエフェクター細胞の急激な活性化が確認されるとともに、アブスコパル効果も確認された3。CTLA4を標的としたPITが腫瘍微小環境内のTregを局所的に排除することにより抗腫瘍効果が得られることや4、EGFRとCD25の二つを標的とするPITがコントロール群や単独治療群と比べて腫瘍増殖を有意に抑制すること5も、非臨床データで確認された。
西川先生の講演
岡田先生の講演
西川先生
岡田先生(左)
楽天メディカル独自の技術基盤であるアルミノックス™プラットフォームを基に開発された最初の医薬品「アキャルックス®点滴静注250㎎」(開発コード:ASP-1929)および医療機器レーザ装置「BioBlade®レーザシステム」を用いたアルミノックス治療は、2020年9月、世界に先駆けて日本において「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能または効果とする製造販売承認を取得しました。2021年1月の両製品発売以降、3年間で400回以上(2023年12月末時点)の治療が実施され、頭頸部がんの革新的な治療選択肢として注目されています。
ASP-1929を用いたアルミノックス治療は、米国、インド、台湾などの国・地域で局所再発頭頸部扁平上皮がんに対する国際共同第Ⅲ相臨床試験(ASP-1929-301試験、ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03769506、CTRI Identifier:CTRI/2023/05/052728)が進行中です。インドでは、2023年8月にASP-1929-301試験の登録患者への治療を開始しました。詳細はプレスリリースをご覧ください。
FHNO 2023のOrganizing Chairmanであり、Kailash Cancer Hospital and Research CenterにおけるASP-1929-301試験の治験責任医師であるRajesh A Kantharia, M.D.は、以下のように述べています。「両医師にFHNO 2023にお越しいただき、この画期的治療法についてインド国内の多くの頭頸部がん治療医にご紹介いただけたことを嬉しく思います。多くの国民が苦しんでいる頭頸部がんへの対応は、我が国最大の医療課題の一つです。光免疫療法は、腫瘍などの標的に対して非常に選択的であるだけでなく、単独治療・併用療法いずれにおいても多くの研究が進められており、進化し続けるこの治療技術に大きな可能性を感じています。インドにおいてもASP-1929-301試験の治療が始まりました。この治療法が、本国の頭頸部がん治療を向上させてくれるものと期待しています」
Dr. Kantharia
- Ishihara H, Nishikawa D, Muraoka D, et al. Changes in serum DAMPs and cytokines/chemokines during near-infrared photoimmunotherapy for patients with head and neck cancer. Cancer Med. 2023; 00: 1-6. doi:10.1002/cam4.6863
- Nagaya T, Friedman J, Maruoka Y, et al. Host Immunity Following Near-Infrared Photoimmunotherapy Is Enhanced with PD-1 Checkpoint Blockade to Eradicate Established Antigenic Tumors. Cancer Immunol Res. 2019;7(3):401-413. doi:10.1158/2326-6066.CIR-18-0546
- Sato K, Sato N, Xu B, et al. Spatially selective depletion of tumor-associated regulatory T cells with near-infrared photoimmunotherapy. Sci Transl Med. 2016;8(352):352ra110. doi:10.1126/scitranslmed.aaf6843
- Okada R, Kato T, Furusawa A, et al. Local Depletion of Immune Checkpoint Ligand CTLA4 Expressing Cells in Tumor Beds Enhances Antitumor Host Immunity. Adv Ther (Weinh). 2021;4(5):2000269. doi:10.1002/adtp.202000269
- Okada R, Furusawa A, Vermeer DW, et al. Near-infrared photoimmunotherapy targeting human-EGFR in a mouse tumor model simulating current and future clinical trials. EBioMedicine. 2021;67:103345. doi:10.1016/j.ebiom.2021.103345
楽天メディカル社について
楽天メディカル社は、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカル社は、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社がある米国に加え、日本、台湾、スイス、インドの世界5カ国に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、楽天メディカル社(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/をご覧ください。
アルミノックス™プラットフォームについて
アルミノックス™プラットフォームは、治療技術基盤の名称であり、米国国立がん研究所の小林久隆先生らが開発したがん光免疫療法が基となっています。同プラットフォームは、医薬品、医療機器、医療技術、その他周辺技術を総合的に利用した技術基盤であり、楽天メディカル社は、これに基づき製品や治療法の開発を進めています。同プラットフォームを用いた治療は、「薬剤の投与」と「光の照射」の 2 段階で構成されます。薬剤は、光感受性物質 (光に反応する物質) と、キャリア (特定の細胞に選択的に集積する成分) から組成される複合体です。同薬剤を投与し、特定の細胞に選択的に集積させた後、その細胞に特定の光を照射することで光感受性物質を活性化させ、生化学・物理学的プロセスにより、特定の細胞を壊死させ、あるいは、排除します。