- 免疫活性化による相乗効果を期待 -
楽天メディカル株式会社(本社:東京都世田谷区/以下、楽天メディカル)は、「遠隔転移を伴わない局所再発頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)患者に対するファーストライン治療として、ASP-1929光免疫療法とペムブロリズマブとの併用療法を標準治療と比較する、第III相多施設共同ランダム化非盲検試験」(治験番号:ASP-1929-381/略称:ECLIPSE*/jRCT番号: jRCT2061250025/以下、本試験)の日本での開始についてお知らせします。本日時点の日本における本試験の実施施設は、東京医科大学病院、愛知県がんセンター、京都府立医科大学附属病院、鳥取大学医学部附属病院、広島大学病院です。
* ECLIPSE: Eliminating Cancer with Laser Illumination and PhotoSEnsitizer
本試験は、多施設共同の無作為化オープンラベル第Ⅲ相臨床試験です。遠隔転移を伴わない局所再発の頭頸部扁平上皮がんに対する一次治療として、ASP-1929による光免疫療法と免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブとの併用療法の有効性および安全性を評価します。グローバルで約400人の患者登録を予定しており、登録患者は、「ASP-1929による光免疫療法とペムブロリズマブの併用治療群」、もしくは治験担当医が選択する「ペムブロリズマブを用いた標準治療(単剤もしくは化学療法との併用)群」に無作為に割り付けられます。
主要評価項目は全生存期間(Overall Survival:OS)で、主な副次評価項目は完全奏効率(Complete Response Rate:CRR)と全奏効率(Overall Response Rate:ORR)です。
本試験は、米国、台湾でも実施中で、今回の日本での開始により、試験実施施設はグローバルで計15以上となりました。今後、米国等で本試験の実施施設を拡大するとともに、東ヨーロッパにおける本試験の開始も予定しています。
頭頸部がんは、世界で7番目に多いがんで、そのうち90%以上が扁平上皮がんです1。頭頸部扁平上皮がんの約60%が局所進行性(III期、IVaまたはIVb期)で、そのうち15~40%は再発します。しかし、再発後の予後は不良であり、5年生存率は50%未満にとどまります1。頭頸部には、呼吸、嚥下、発声、さらには脳神経を含む多くの重要な機能が集中しているため、これらの機能を温存しながら、生存期間を延長する治療法が求められています。
楽天メディカル 代表取締役会長 三木谷 浩史は、以下のように述べています。
「アルミノックス™プラットフォームを基盤として開発された治療法と、免疫チェックポイント阻害薬との併用により、免疫の活性化が促されることが期待されます。この併用療法が、より多くの頭頸部がん患者さんに届くことを目指し、本試験を米国、台湾に続き、日本でも実施する運びとなりました。今後の実施施設・地域の拡大により、本試験の進捗はさらに加速する見込みです。患者さんにとって新たな『光』となる治療法の実現に向けて、治験責任医師や本試験に関わるスタッフの皆さんとともに、本試験に全力で取り組んでまいります」
【各試験実施施設の治験責任医師からのコメント】
東京医科大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 塚原 清彰 先生
「頭頸部癌の治療法を選択するとき、医師も患者さんも「会話、食事等の機能温存」と「がん根治」の狭間で苦悩します。低侵襲で生活の質(QOL)を保てる頭頸部アルミノックス治療と免疫チェックポイント阻害薬の組み合わせによる全生存期間向上は次世代の治療選択に必要不可欠だと考えています」
愛知県がんセンター 頭頸部外科 花井 信広 先生
「頭頸部アルミノックス治療は、国内で早期に導入された新規治療として、再発頭頸部がんの局所制御に寄与してきましたが、治療効果の向上と全身療法との連携が今後の課題です。本試験は、一次治療として用いる免疫チェックポイント阻害薬に頭頸部アルミノックス治療を併用し、生存期間の延長や新たな治療体系の構築につながる可能性を検証するものであり、意義深いと考えています」
京都府立医科大学附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 平野 滋 先生
「頭頸部領域は多くの大事な機能が集中しており、これを損なうことなく癌をコントロールあるいは治癒することが重要です。頭頸部アルミノックス治療が登場して4年以上が経過し、局所制御の効果は我々医療サイドとしても実感しているところですが、これに免疫チェックポイント阻害薬を併用する治験が始まったことは、頭頸部癌診療のさらなる進歩に寄与するものと期待しております」
鳥取大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 藤原 和典 先生
「ペムブロリズマブと光免疫療法の併用による治療効果を検証する重要な治験であり、今後の頭頸部癌治療の発展においても欠かせないものと考えておりますので、スタッフ皆で力をあわせて一生懸命に治験の遂行に取り組んでいきたいと考えています」
広島大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 上田 勉 先生
「再発頭頸部がんの治療は依然困難で、新たな治療法が求められています。本試験で腫瘍制御・転移抑制と生存期間延長が示されれば、患者さんがQOLを保ちながら生活できる可能性が広がると期待しています」
本試験実施の根拠となった第I/II相試験(ASP-1929-181試験/ClinicalTrials.gov Identifier:NCT04305795)における中間評価**では、ORRは35.3%、うち完全奏効(CR)は 23.5%、部分奏効(PR)は11.8%で、24か月時点の推定全生存率は52.4%(OS中央値は未到達)でした。有害事象は管理可能で、忍容性は概ね良好でした。
**データカットオフ日:2023年8月31日
なお、ASP-1929(一般名:セツキシマブ サロタロカンナトリウム(遺伝子組換え)製品名:アキャルックス®点滴静注250㎎)と医療機器レーザ装置(製品名:BioBlade®レーザシステム)は、2020年9月に「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能・効果として、世界に先駆けて日本で製造販売承認を取得し、2021年1月より「頭頸部アルミノックス治療」として臨床導入されています。現在、全国180か所以上の耳鼻咽喉科・頭頸部外科および歯科口腔外科において、450名を超える医師・歯科医師により治療提供が可能となり、累計約1000回の治療が実施されました(7月下旬時点)。リアルワールドデータからは、頭頸部アルミノックス治療が局所制御を目的とした治療として有用であることが示唆2されました。同治療は、がんによる症状進行を抑えるだけでなく、機能温存や生存期間延長を期待して、既存の局所治療が適さない再発頭頸部がん患者さんに提供されています。
参考:
- Chow LQM. Head and Neck Cancer. N Engl J Med. 2020;382(1):60-72. doi:10.1056/NEJMra1715715
- 篠﨑 剛ら.:演題番号 O47-5.第34回日本頭頸部外科学会総会ならびに学術講演会.
頭頸部(とうけいぶ)がんについて
日本では、年間約47,000人*の方が頭頸部がんを発症しています。頭頸部がんとは、頭から鎖骨までの範囲に含まれるがんの総称です(脳と目は除く)。頭頸部は大きく分けて鼻、口腔、咽頭、喉頭といった器官で構成されており、発生部位により、咽頭がん(上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん)、喉頭がん(声門がん、声門上がん、声門下がん)、鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞がんなど)、口腔がん(舌がんなど)、唾液腺がん、甲状腺がんなどの診断名がつきます。この頭頸部と呼ばれる部位には、呼吸や嚥下など人間が生きるうえで必要な機能、さらには発声、味覚、聴覚など日常生活に重要な機能が集中しています。これらに障害が起きるとQuality of Life (QOL: 生活の質)に影響を及ぼすため、がんを治すための根治性とQOLの両立を目指した治療法が必要とされています。
*厚生労働省健康局がん・疾病対策課「令和3年全国がん登録 罹患数・率 報告」付表1.罹患数 口唇~その他および部位不明確の口唇、口腔および咽頭、鼻腔および中耳、副鼻腔、喉頭、甲状腺の合計値
アキャルックス®点滴静注250㎎について
アキャルックス®点滴静注250㎎は、キメラ型抗ヒト上皮成長因子受容体 (EGFR) モノクローナル抗体 (IgG1) であるセツキシマブと光感受物質である色素IRDye® 700DX を結合させた抗体-光感受性物質複合体からなる点滴静注用の注射剤です。アルミノックス™プラットフォームを基に開発された最初の医薬品で、一般名はセツキシマブ サロタロカンナトリウム (遺伝子組換え) です。
BioBlade®レーザシステムについて
BioBlade®レーザシステムは、アキャルックス®点滴静注250㎎と組み合わせて使用するレーザ装置です。レーザシステムは、レーザ装置(BioBlade®レーザ、BioBlade®レーザ WR)、必要な付属品、ディフューザー、およびニードルカテーテルにより構成されます。ディフューザーは、照射を行うための補助器具で、光ファイバーの前方から照射を行う表面照射用のフロンタルディフューザー、光ファイバー端部より側方へ照射を行う表面照射用のサイドファイヤーディフューザー、および光ファイバー端部より円周方向に照射を行う組織内照射用のシリンドリカルディフューザーの3種類があります。BioBlade®ディフューザー用ガイド管は、湾曲することが可能でフロンタルディフューザーやサイドファイヤーディフューザーを照射部位まで誘導するために使用します。ニードルカテーテルは、組織内治療において、シリンドリカルディフューザーを導入するために使用します。
楽天メディカル株式会社について
楽天メディカルは、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカルは、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社を構える米国に加え、日本、台湾、スイス、インドの世界5カ国/地域に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、Rakuten Medical, Inc.(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/をご覧ください。
愛知県がんセンターについて
愛知県がんセンターは1964年にがん研究会、国立がん研究センターに次いで設立され、我が国の 3大comprehensive cancer center(病院と研究所を併設する総合がんセンター)の一つとして、60年余に渡って実績と信頼を築いて来ました。病院と研究所が併設されている強みを存分に活かし、科学的なエビデンスをもとに、現在ある最良の医療を提供するとともに、新しいエビデンスの創出、明日のより良い医療、がんにならないための予防法の創出に向け、まい進しています。詳細については、https://cancer-c.pref.aichi.jp/ をご覧ください。
京都府立医科大学附属病院について
京都府立医科大学附属病院は、東に鴨川の清流、西に京都御所の緑を眺望できる恵まれた環境の中で、「世界トップレベルの医療を地域へ」を理念に、日夜、医療スタッフが一丸となって高度で安全な医療を提供するために取り組んでいます。詳しくは、https://www.h.kpu-m.ac.jp/doc/index.htmlをご覧ください。
鳥取大学医学部附属病院について
鳥取大学医学部附属病院は、「地域と歩む高度医療の実践」を理念に掲げ、地域に根ざした先進的な医療の提供を通じて、患者さん一人ひとりに最適な医療を届けることを目指しています。高度急性期医療を担う基幹病院として、がん診療連携拠点病院の役割も果たし、専門的な人材の育成やがん登録の推進など、多角的な取組みによって鳥取県全体のがん診療成績の向上に努めています。また、最新の医療技術・知見を取り入れた診療・研究・教育の一体的な推進により、地域医療の質の向上と持続可能な医療体制の構築に貢献しています。詳しくは、https://www2.hosp.med.tottori-u.ac.jp/ をご覧ください。
広島大学病院について
国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心的役割を担う全国16施設目の「臨床研究中核病院」として2025年5月30日、厚生労働大臣の承認を受けました。広島県唯一の特定機能病院で、がん診療連携拠点病院、小児がん拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、てんかん支援拠点病院など多くの指定を受け、様々な先端医療を推進しています。病床数742床、2024年度の外来患者数延べ51万9601人、入院患者数延べ22万9231人、手術件数9105件。