楽天メディカル社(本社:米国 カリフォルニア州 サンディエゴ/以下、楽天メディカル)は、抗体-光感受性物質複合体「ASP-1929」を用いたアルミノックス治療(光免疫療法)の局所再発頭頸部扁平上皮がんに対する国際共同第Ⅲ相臨床試験(ASP-1929-301/ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03769506)について、インドでの実施許可をインド中央医薬品基準管理機構(Central Drugs Standard Control Organization/CDSCO)より取得し、インド臨床試験登録(Clinical Trial Registry of India:CTRI)への臨床試験情報の登録が完了したことをお知らせします(Clinical Trial Registry of India/CTRI Identifier:CTRI/2023/05/052728)。インドでは、Tata Memorial CentreやNarayana Healthをはじめとする複数の主要な医療機関が本試験に参加予定で、準備が整い次第、登録患者さんへの治療が開始される予定です。本試験は、現在、米国や台湾など複数の国で実施されており、今回新たに参加するインドを含め合計275名の患者さんを登録する予定です。
インドでは、毎年20万人以上の方が新たに頭頸部がんと診断され、その数は世界全体の新規頭頸部がん患者数の約25%を占めます1。その理由の一つに、噛みたばこの使用率の高さがあります。インドでは、15歳以上の人口の28%以上がたばこを吸っており、その約75%が嚙みたばこをはじめとする無煙たばこを使用しています2。インドにおける口腔がん(頭頸部がんの一種)の半数以上が嚙みたばこをはじめとする無煙たばこに起因しているという報告があります3。患者数の多さに加え、病状が進行してから受診するため予後不良となるケースが多いことも知られています4。頭頸部がん治療医は、病状が進行した患者さんを多く抱えることとなり、診療時間も治療選択肢も限られてしまいます。手術、放射線、化学療法などいずれも広く使われていますが、さらなる治療選択肢が必要とされています。
国際共同無作為化オープンラベル第Ⅲ相臨床試験であるASP-1929-301試験は、過去に少なくとも2種類以上の治療(うち少なくとも1種類は全身治療)で効果が得られず、外科手術や放射線治療を受けられない局所再発頭頸部扁平上皮がん患者さんを対象に、ASP-1929を用いたアルミノックス治療(光免疫療法)の有効性および安全性を評価します。患者さんは無作為にASP-1929群または治験担当医が選択する全身療法群に割り付けられます(2:1の割合)。主要評価項目は、無増悪生存期間(Progression-Free Survival: PFS)と全生存期間(Overall Survival: OS)で、主要な副次評価項目は客観的奏功率(Objective Response Rate: ORR)です。
楽天メディカルCo-CEOの三木谷 浩史は、「頭頸部がん治療のアンメットニーズが高いインドにおいて、ASP-1929を用いたアルミノックス治療のピボタル第Ⅲ相臨床試験を実施できることを大変嬉しく思います。当社にとって本試験は非常に重要であり、新たにインドが参加することで、本試験は加速度的に進捗することが期待されます。当社は、世界中の頭頸部がん患者さんに一日も早く新たな治療選択肢をお届けできるよう、各国の医療機関や規制当局と連携し、スピード感をもって開発活動を進めてまいります」と述べています。
ASP-1929は、抗体であるセツキシマブに光感受性物質である色素IRDye® 700DX が結合した抗体-光感受性物質複合体であり、楽天メディカルがアルミノックス™プラットフォームを基に開発した最初の薬剤です。頭頸部がんに多く発現する上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に集積し、波長690 nmのレーザ光照射により局所的に活性化されることにより、がん細胞を選択的に破壊します。日本では、2020年9月、医薬品「アキャルックス®点滴静注250㎎」として、本薬剤と組み合わせて用いる医療機器レーザ装置「BioBlade®レーザシステム」とともに「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能または効果とする製造販売承認を厚生労働省から取得し、2021年1月より販売しています。両製品を用いた「頭頸部アルミノックス治療」は、2023年5月現在、40都道府県の100以上の医療機関における250名以上の治療医によって提供可能となっており、これまでに累計約300回の治療が実施されました。
- Ferlay J, Ervik M, Lam F, Colombet M, Mery L, Piñeros M, Znaor A, Soerjomataram I, Bray F (2020). Global Cancer Observatory: Cancer Today. Lyon, France: International Agency for Research on Cancer. Available from: https://gco.iarc.fr/today, accessed May 3, 2023
- Global Adult Tobacco Survey (GATS) India Fact Sheet 2016-17. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). https://www.tobaccofreekids.org/assets/global/pdfs/en/GATS_India_2016-17_FactSheet.pdf
- Gupta PC, Arora M, Sinha DN, Asma S, Parascandola M (eds.); Smokeless Tobacco and Public Health in India. Ministry of Health & Family Welfare, Government of India; New Delhi; 2016. https://nhm.gov.in/NTCP/Surveys-Reports-Publications/Smokeless_Tobacco_and_Public_Health_in_India.pdf
- Kulkarni MR. Head and Neck Cancer Burden in India. Int J Head and Neck Surg 2013;4(1):29-35 https://www.ijhns.com/doi/pdf/10.5005/jp-journals-10001-1132
* アルミノックス™プラットフォームを基にした治療法は、日本以外では臨床試験の段階にあり、インドにおいて製造販売承認は取得していません。
楽天メディカル社について
楽天メディカル社は、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカル社は、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「がん克服。」というミッションの実現を目指しています。本社がある米国に加え、日本、オランダ、台湾、スイス、インドの世界6カ国に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、楽天メディカル社(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/をご覧ください。
アルミノックス™プラットフォームについて
アルミノックス™プラットフォームは、治療技術基盤の名称であり、米国国立がん研究所の小林久隆先生らが開発したがん光免疫療法が基となっています。同プラットフォームは、医薬品、医療機器、医療技術、その他周辺技術を総合的に利用した技術基盤であり、楽天メディカル社は、これに基づき製品や治療法の開発を進めています。同プラットフォームを用いた治療は、「薬剤の投与」と「光の照射」の 2 段階で構成されます。薬剤は、光感受性物質 (光に反応する物質) と、キャリア (特定の細胞に選択的に集積する成分) から組成される複合体です。同薬剤を投与し、特定の細胞に選択的に集積させた後、その細胞に特定の光を照射することで光感受性物質を活性化させ、生化学・物理学的プロセスにより、特定の細胞を壊死させ、あるいは、排除します。
ASP-1929について
楽天メディカル社がアルミノックス™プラットフォームを基に開発した最初の薬剤であるASP-1929(一般名:セツキシマブ サロタロカンナトリウム)は、抗体であるセツキシマブに光感受性物質である色素IRDye® 700DXが結合した抗体-光感受性物質複合体で、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に集積することが確認されています。EGFRは、頭頸部がん、乳がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん、すい臓がんなど様々な種類の固形がんに発現していることが知られています。ASP-1929ががん細胞に集積した後、波長690 nmのレーザ光を専用のレーザ照射システムを用いて照射することにより、ASP-1929が局所的に励起され光化学反応を起こします。これにより細胞膜が傷害されたがん細胞が選択的に壊死すると考えられています。本剤を用いたアルミノックス治療は、2018年1月に米国食品医薬品局からファストトラックに指定され、現在局所再発頭頸部扁平上皮がんの国際共同第Ⅲ相臨床試験を実施しています。日本において、先駆け審査指定制度の対象品目として指定され、かつ条件付き早期承認制度の適用のもと申請を行い、2020年9月に「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能または効果とする製造販売承認を厚生労働省から取得しています。日本以外の規制当局による承認は受けておりません。
フォワード・ルッキング・ステートメント(将来予想に関する記述)
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