- 光照射の翌日のFDG-PET/CT検査結果において、治療反応とみられる変化が観測された
- ASP-1929-103試験は、切除可能ながんを対象としたアルミノックス治療の初めての臨床試験
楽天メディカル社(本社:米国 カリフォルニア州 サンディエゴ、Co-CEO:三木谷 浩史/以下、楽天メディカル)は、2023年6月24日~27日に米国シカゴで開催された核医学・分子イメージング学会(Society of Nuclear Medicine and Molecular Imaging:SNMMI)の2023年年次総会において、切除可能な原発または再発の頭頸部扁平上皮がんおよび皮膚扁平上皮がんを対象とした、蛍光イメージングシステムを用いたASP-1929によるアルミノックス治療(光免疫療法)の非盲検、単一群、Window of Opportunity(治療機会)※第Ⅱ相臨床試験(ASP-1929-103試験/ClinicalTrials.gov Identifier: NCT05182866)より得られた新たな解析結果が発表されたことをお知らせします。本データは、ASP-1929-103試験の実施にあたり共同研究開発契約を締結している米国国立がん研究所のLiza Lindenberg, M.D.より口頭発表されました。
今回発表されたASP-1929-103試験の中間評価における探索的解析では、アルミノックス治療前後のFDG-PET/CT画像を比較したところ、光照射翌日に複数の指標で変化がみられることが示されました。FDG-PET/CT検査とは、がん細胞が正常細胞より多くのブドウ糖を取り込む性質を利用してブドウ糖に似た性質を持つ薬剤(18F-フルオロデオキシグルコース:18F-FDG)の集積を確認するPET検査と、CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)検査を同時に行うものです。
SNMMI2023での主な発表内容
演題:Early FDG Response after Near-Infrared Photoimmunotherapy for Head and Neck and Cutaneous Squamous Cell Carcinoma(抄録番号:P50)
発表者:Liza Lindenberg, M.D.(米国国立がん研究所 Molecular Imaging Branch)
- ASP-1929を用いたアルミノックス治療の光照射の翌日にFDG-PET/CT検査を行うことにより、治療反応が確認された
- 18F-FDG投与後一定期間を置いてから追加撮像を行う遅延画像(Delayed PET/CT)は、FDG-PET/CT検査の炎症による影響を軽減する可能性がある
- 病理学的評価は、アルミノックス治療後のFDG-PET/CT検査を補完する情報となる可能性がある
ASP-1929-103試験は、切除可能ながんを対象としたアルミノックス治療の初めての臨床試験です。本試験の一環として、アルミノックス治療の抗腫瘍効果の測定方法を検証するため、治療早期(光照射の翌日)のFDG-PET/CT検査の有用性について解析が行われました。
ASP-1929-103試験の概要
本試験は、切除可能な原発または再発の頭頸部扁平上皮がんおよび皮膚扁平上皮がんを対象とした、抗EGFR抗体-光感受性物質複合体「ASP-1929」と蛍光イメージングシステムを用いたアルミノックス治療の非盲検、単一群、Window of Opportunity(治療機会)※の第Ⅱ相臨床試験です。米国国立がん研究所と島津製作所との連携のもと、楽天メディカルにより実施され、米国で22名の患者さんを登録する予定です。標準治療である外科的切除の前に、ASP-1929を用いたアルミノックス治療の単回治療を実施した際の有効性および安全性を評価します。また、島津製作所の蛍光イメージングシステムを用いて、ASP-1929を構成する光感受性物質IRDye® 700DXの蛍光発光をリアルタイムに観察・記録し、同システムの臨床における利用可能性を評価します。
* Window of Opportunity(治療機会)試験とは、被験者ががんと診断されてから標準治療が開始されるまでの短期間に、標準治療以外の、被験者にとって有用となる可能性のある治療を実施するものです1.2.。
- Aroldi F, Lord SR. Window of opportunity clinical trial designs to study cancer metabolism. Br J Cancer. 2020;122(1):45-51. doi:10.1038/s41416-019-0621-4
- Schmitz S, Duhoux F, Machiels JP. Window of opportunity studies: Do they fulfil our expectations? Cancer Treat Rev. 2016 Feb;43:50-7. doi: 10.1016/j.ctrv.2015.12.005. Epub 2015 Dec 31. PMID: 26827692.
楽天メディカル社について
楽天メディカル社は、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカル社は、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社がある米国に加え、日本、オランダ、台湾、スイス、インドの世界6カ国に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、楽天メディカル社(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/をご覧ください。
アルミノックス™プラットフォームについて
アルミノックス™プラットフォームは、治療技術基盤の名称であり、米国国立がん研究所の小林久隆先生らが開発したがん光免疫療法が基となっています。同プラットフォームは、医薬品、医療機器、医療技術、その他周辺技術を総合的に利用した技術基盤であり、楽天メディカル社は、これに基づき製品や治療法の開発を進めています。同プラットフォームを用いた治療は、「薬剤の投与」と「光の照射」の 2 段階で構成されます。薬剤は、光感受性物質 (光に反応する物質) と、キャリア (特定の細胞に選択的に集積する成分) から組成される複合体です。同薬剤を投与し、特定の細胞に選択的に集積させた後、その細胞に特定の光を照射することで光感受性物質を活性化させ、生化学・物理学的プロセスにより、特定の細胞を壊死させ、あるいは、排除します。
ASP-1929について
楽天メディカル社がアルミノックス™プラットフォームを基に開発した最初の薬剤であるASP-1929(一般名:セツキシマブ サロタロカンナトリウム)は、抗体であるセツキシマブに光感受性物質である色素IRDye® 700DXが結合した抗体-光感受性物質複合体で、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に集積することが確認されています。EGFRは、頭頸部がん、乳がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん、すい臓がんなど様々な種類の固形がんに発現していることが知られています。ASP-1929ががん細胞に集積した後、波長690 nmのレーザ光を専用のレーザ照射システムを用いて照射することにより、ASP-1929が局所的に励起され光化学反応を起こします。これにより細胞膜が傷害されたがん細胞が選択的に壊死すると考えられています。本剤を用いたアルミノックス治療は、2018年1月に米国食品医薬品局からファストトラックに指定され、現在局所再発頭頸部扁平上皮がんの国際共同第Ⅲ相臨床試験を実施しています。日本において、先駆け審査指定制度の対象品目として指定され、かつ条件付き早期承認制度の適用のもと申請を行い、2020年9月に「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能または効果とする製造販売承認を厚生労働省から取得しています。日本以外の規制当局による承認は受けておりません。
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