-入院中の患者さんが過ごす室内を明るくし読書・食事がしやすいよう環境改善を行う-
東海大学医学部付属病院(所在地:神奈川県伊勢原市、病院長:渡辺 雅彦/以下、東海大学病院)と楽天メディカル株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役会長:三木谷 浩史/以下、楽天メディカル)は、頭頸部アルミノックス治療(光免疫療法/以下、本治療)に用いる特定の波長の光をカットした「励起光減弱(れいきこうげんじゃく)ライト」(以下、本品)※1を使用した患者さんの生活の質(QOL:Quality of Life)に関する共同研究(研究代表者 東海大学医学部専門診療学系耳鼻咽喉科・頭頸部外科准教授 和佐野浩一郎)を開始したことをお知らせします。2023年1月に東海大学病院にて、本共同研究における1例目の患者さんの本治療に伴う照度管理下の病室で本品が使用されました。
<本共同研究の概要>
■研究題目:「頭頸部アルミノックス治療における励起光減弱ライトによる患者の生活の質および医療者の使用感に関する調査研究」
■研究目的:本治療に使用される薬剤を励起する波長成分を、高精度フィルターを装着することで特定波長領域を99%以上減弱した本品を用い、QOL、および診療を担当する医療従事者(医師・看護師)の使用感を調査します。
本治療では、がん細胞の表面に多く現れる特定のタンパク質に結合する医薬品「アキャルックス®点滴静注250㎎」(一般名:セツキシマブ サロタロカンナトリウム(遺伝子組換え)/以下、本医薬品)を点滴で投与します。本医薬品をがん細胞に結合させた約24時間後に、医療機器レーザ装置「BioBlade®レーザシステム」(以下、本医療機器)を用いてがん細胞に690nmの波長の光を照射します。これにより本医薬品に含まれる色素IRDye® 700DXが反応し、がん細胞を死滅させます。
本医療機器による光照射以外での本医薬品の反応を避けるため、本治療を受けた患者さんは、ある一定の期間、直射日光を避け、室内においては手元でのスポットライト使用を避けるなど照度を管理した環境下で過ごしていただく必要があります。
東海大学病院と楽天メディカルは、本治療を受けた患者さんが室内で読書や食事をしやすくなるよう環境改善を目指し、本品を用いたQOLに関する共同研究を実施することとなりました。
※1「励起光減弱ライト」とは、650nmから900nmの波長を99%遮断するフィルターを装着した卓上灯です。東海大学と楽天メディカルは、本品の特許出願中です。
<励起光減弱ライト使用時の比較画像(注1)>
励起光減弱ライト使用時 | 励起光減弱ライト未使用時 |
(注1)同じカメラ露出にて撮影しました。ライト未使用の画像は、目視で確認した明るさより暗い写りになっています。
なお、7月6日(木)、第35回 日本頭蓋底外科学会におけるイブニングセミナーにて、和佐野浩一郎より「頭頸部アルミノックス治療の実際とQOL維持のための対策」と題した発表があります。本発表では本品を使用するため、実際の明るさもご体験いただけます。詳細は、本学会ホームページをご覧ください。
東海大学医学部付属病院
東海大学医学部付属病院は、がん治療において患者さんにとって最良の治療選択肢を提供できるよう最新の治療を導入しています。また、治療にあたっては、患者さんの生活の質(QOL)をできるだけ高い状態で保つことを心がけています。
今回、耳鼻咽喉科・頭頸部外科において頭頸部がんに対してアルミノックス治療というこれまでと異なる治療を導入するに当たり、本治療中の一定期間は直射日光からの回避や室内における照度管理が必要となり、QOL低下が懸念されることから、対策が必要だと考えました。そこで楽天メディカル株式会社とともに、避けなくてはいけない波長の光を選択的に除去することのできる励起光減弱ライトを開発しました。励起光減弱ライトを使うことで、室内での読書や食事などの治療中の生活を明るい環境下で過ごすことが可能となり、QOLの低下を防ぐことができると考えています。また、医師・看護師・薬剤師など医療従事者にとっても明るい治療環境を実現することは、診察や薬剤の確認など医療安全管理上において大きな意義があると考えております。
楽天メディカル株式会社について
楽天メディカルは、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発された医薬品・医療機器の前臨床試験では、特定の細胞の速やか、かつ選択的な壊死をもたらすデータが示されています。楽天メディカルは、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。米国に、本社と研究開発拠点を構え、日本、台湾、オランダ、スイス、インドの世界6カ国を拠点としています。楽天メディカル株式会社は、楽天メディカル社(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/ をご覧ください。
頭頸部(とうけいぶ)がんについて
日本では、年間約49,000人*の方が頭頸部がんを発症しています。頭頸部がんとは、頭から鎖骨までの範囲に含まれるがんの総称です(脳と目は除く)。頭頸部は大きく分けて鼻、口腔、咽頭、喉頭といった器官で構成されており、発生部位により、咽頭がん(上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん)、喉頭がん(声門がん、声門上がん、声門下がん)、鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞がんなど)、口腔がん(舌がんなど)、唾液腺がん、甲状腺がんなどの診断名がつきます。この頭頸部と呼ばれる部位には、呼吸や食事など人間が生きるうえで必要な機能、さらには発声、味覚、聴覚など日常生活に重要な機能が集中しています。これらに障害が起きるとQuality of Life (QOL: 生活の質)に影響を及ぼすため、がんを治すための根治性とQOLのバランスを保った治療法が必要とされています。
アキャルックス®点滴静注250㎎について
アキャルックス®点滴静注250㎎は、キメラ型抗ヒト上皮成長因子受容体 (EGFR) モノクローナル抗体 (IgG1) であるセツキシマブと光感受物質である色素IRDye® 700DX を結合させた抗体-光感受性物質複合体からなる点滴静注用の注射剤です。アルミノックス™プラットフォームを基に開発された最初の医薬品で、一般名はセツキシマブ サロタロカンナトリウム (遺伝子組換え) です。
BioBlade®レーザシステムについて
BioBlade®レーザシステムは、アキャルックス®点滴静注250㎎と組み合わせて使用するレーザ装置です。レーザシステムは、BioBlade®レーザ、必要な付属品、ディフューザー及びニードルカテーテルにより構成されます。ディフューザーは、照射を行うための補助器具で、光ファイバーの前方から照射を行う表面照射用のフロンタルディフューザーと、光ファイバーの側面から照射を行う組織内照射用のシリンドリカルディフューザーの2種類があります。ニードルカテーテルは、組織内治療において、シリンドリカルディフューザーを導入するために使用します。