- COX-2選択的阻害薬の予防的投与により、浮腫体積が30-50%減少
- レーザ光照射後の投与でも、浮腫体積が25%減少
- 抗腫瘍効果を損なうことなく、浮腫を管理できる可能性が示唆された
Rakuten Medical, Inc.(本社:米国 カリフォルニア州 サンディエゴ/以下、楽天メディカル)は、2024年4月8日(米国時間)、米国サンディエゴで開催された米国癌学会(American Association for Cancer Research:AACR)の第115回年次総会(以下、AACR 2024)において、アルミノックス治療(光免疫療法)に伴う浮腫の管理に関する研究結果をポスター発表したことをお知らせします。
今回ポスター発表した研究では、楽天メディカルがアルミノックス治療(光免疫療法)後の浮腫を評価するために開発したマウス腫瘍モデルを用いて、様々なステロイド薬および非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の浮腫軽減効果を検証しました。その結果、NSAIDsに分類されるCOX-2選択的阻害薬「メロキシカム」(一般名)をアルミノックス治療(光免疫療法)のレーザ光照射前もしくは後に投与した場合、浮腫体積に明らかな減少が見られました(予防投与で30-50%、照射後の投与で25%の減少)。また、メロキシカムの投与に伴う浮腫の軽減は、抗腫瘍効果に悪影響を及ぼさないことが確認されました。
楽天メディカルが独自の技術基盤「アルミノックス™プラットフォーム」を基に開発するアルミノックス治療(光免疫療法)は、薬剤とレーザ光照射により、腫瘍などの標的細胞を高度に選択的かつ迅速に壊死させる治療法です。早期臨床試験では、頭頸部癌に対して管理可能な安全性プロファイルが示されています*。一方、注意すべき有害事象の一つに浮腫があり、喉頭浮腫により気道閉塞のおそれがある場合には予防的気管切開が必要とされています。そのため、患者さんの負担が軽減されるような、新たな浮腫への対処法が必要とされています。今回の研究結果を基に、楽天メディカルは、臨床試験や実臨床でのアルミノックス治療(光免疫療法)による浮腫の課題を解決すべく、さらなる検討を進めます。
AACR 2024でのポスター発表の概要
ポスター名:Reduction in photoimmunotherapy-induced edema with COX-2 inhibition: Combatting clinically relevant adverse events without compromising efficacy
抄録番号:1415
抄録リンク:https://www.abstractsonline.com/pp8/#!/20272/presentation/5855
- Ephrin A2(EphA2)を発現するように遺伝子操作したLL/2腫瘍を持つマウスに、抗EphA2抗体-IR700複合体もしくは生理食塩水を投与しレーザ光照射したところ、コントロール群では浮腫は生じなかったが、複合体投与とレーザ光照射を受けたマウス群では、レーザ光照射から6時間後にピークとなる、照射量に比例した浮腫体積の増加が認められた。
- 次に、光免疫療法に関連した浮腫の発生時(照射から2時間後)、ピーク時(照射から6時間後)、消失時(照射から24時間後)の血中と腫瘍領域における炎症性サイトカインと免疫細胞集団を評価した。その結果、浮腫形成のピーク時に炎症反応の亢進を示す血中の好中球(コントロール群の500倍、n=10、p<0.0001)や、IL-6(n=5、p<0.001)とIL-10(n=5、p<0.05)が有意に増加したことが確認された。
- 浮腫の形成に対処するため、次に、ステロイド薬またはCOX-2選択的阻害薬「メロキシカム」を含むNSAIDsの効果を評価した。その結果、ステロイド薬による浮腫体積の減少は認められなかった。一方、メロキシカムは、評価したすべての時点およびレーザ光照射量で浮腫体積の明らかな減少をもたらした。
- メロキシカムをレーザ光照射の2時間前に予防的に投与した場合、照射から2時間後と6時間後の両方で浮腫体積が30~50%減少した。レーザ光照射の2時間後にメロキシカムを投与した場合、照射から6時間後に浮腫体積は25%減少した(すべての設定において、n=10、p<0.0001)。
- メロキシカムの投与により浮腫が軽減しても、抗腫瘍効果に悪影響を及ぼさなかった。
* Cognetti DM, Johnson JM, Curry JM, et al. Phase 1/2a, open-label, multicenter study of RM-1929 photoimmunotherapy in patients with locoregional, recurrent head and neck squamous cell carcinoma. Head Neck. 2021;43(12):3875-3887. doi:10.1002/hed.26885
楽天メディカルについて
楽天メディカルは、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカルは、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社を構える米国に加え、日本、台湾、スイス、インドの世界5カ国/地域に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、Rakuten Medical, Inc.(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/ をご覧ください。
アルミノックス™プラットフォームについて
アルミノックス™プラットフォームは、治療技術基盤の名称であり、米国国立がん研究所の小林久隆先生らが開発したがん光免疫療法が基となっています。同プラットフォームは、医薬品、医療機器、医療技術、その他周辺技術を総合的に利用した技術基盤であり、楽天メディカルは、これに基づき製品や治療法の開発を進めています。同プラットフォームを用いた治療は、「薬剤の投与」と「光の照射」の 2 段階で構成されます。薬剤は、光感受性物質 (光に反応する物質) と、キャリア (特定の細胞に選択的に集積する成分) から組成される複合体です。同薬剤を投与し、特定の細胞に選択的に集積させた後、その細胞に特定の光を照射することで光感受性物質を活性化させ、生化学・物理学的プロセスにより、特定の細胞を壊死させ、あるいは、排除します。