楽天メディカル株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役会長:三木谷 浩史/以下、楽天メディカル)は、5月14日より、医薬品「アキャルックス®点滴静注250㎎」(一般名:セツキシマブ サロタロカンナトリウム/以下、本剤)および医療機器レーザ装置「BioBlade®レーザシステム」による「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」に対する頭頸部アルミノックス治療(光免疫療法)(以下、本治療)について、適切な治療機会の確保のため、希少疾患である唾液腺がんなどを含む頭頸部非扁平上皮がん患者におけるEGFRタンパク検査(※1)(以下、本検査)データの無償提供を開始することをお知らせします。
本治療は本剤を投与し、がん細胞の表面に発現しているタンパク質である EGFRに結合させた約24時間後に、医療機器を用いてレーザ光を当てることで薬剤がこれに反応し、がん細胞を死滅させる治療法です。
日本では、年間約45,000人*の方が頭頸部がんを発症し、同疾患の約90%以上は頭頸部扁平上皮がんであることが報告されています1)。頭頸部扁平上皮がんの細胞表面には、細胞の増殖を促す物質と結合して、増殖のシグナルを生じるEGFRが多く発現しています。しかし、希少疾患である唾液腺がんなどを含む頭頸部非扁平上皮がんは、EGFRの発現がさまざまであるとの報告があります2)3)。そのため、本治療を頭頸部非扁平上皮がんに対して検討する際には、各施設で事前にEGFR発現の確認を行うことが日本頭頸部外科学会から推奨されています。なお、本剤に対する本検査は保険適用されていないため、本検査費用の負担などは、各医療機関によって対応が異なります。
楽天メディカルは、患者さんが適時に適切な治療機会を得られるよう、医療用医薬品製造販売業公正取引協議会に相談の上、本検査データの無償提供を実施することとなりました。一人でも多くの頭頸部がん患者さんが適切な治療にアクセスできるよう、取り組んでまいります。
本取り組みは、本治療を検討する施設にて、本検査が実施困難な医療機関に限り、楽天メディカルが本検査データを無償提供するものです。楽天メディカルは、必要事項を確認し、本検査データ提供が各種法令などに抵触しないことが確認できた場合は、委託検査会社と連携の上、検体を回収・解析し、同社を通じて本検査データを依頼医療機関へ提供するスキームになっています。なお、楽天メディカルが患者さんの個人情報に触れることはありません。
※1 EGFRタンパク検査とは、腫瘍細胞上の上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor: EGFR)の発現を確認する検査です。
楽天メディカル株式会社について
楽天メディカルは、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカルは、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社を構える米国に加え、日本、台湾、スイス、インドの世界5カ国/地域に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、Rakuten Medical, Inc.(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/をご覧ください。
アルミノックス™プラットフォームについて
アルミノックス™プラットフォームは、治療技術基盤の名称であり、米国国立がん研究所の小林久隆先生らが開発したがん光免疫療法が基となっています。同プラットフォームは、医薬品、医療機器、医療技術、その他周辺技術を総合的に利用した技術基盤であり、楽天メディカルは、これに基づき製品や治療法の開発を進めています。同プラットフォームを用いた治療は、「薬剤の投与」と「光の照射」の 2 段階で構成されます。薬剤は、光感受性物質 (光に反応する物質) と、キャリア (特定の細胞に選択的に集積する成分) から組成される複合体です。同薬剤を投与し、特定の細胞に選択的に集積させた後、その細胞に特定の光を照射することで光感受性物質を活性化させ、生化学・物理学的プロセスにより、特定の細胞を壊死させ、あるいは、排除します。
頭頸部(とうけいぶ)がんについて
日本では、年間約45,000人*の方が頭頸部がんを発症しています。頭頸部がんとは、頭から鎖骨までの範囲に含まれるがんの総称です(脳と目は除く)。頭頸部は大きく分けて鼻、口腔、咽頭、喉頭といった器官で構成されており、発生部位により、咽頭がん(上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん)、喉頭がん(声門がん、声門上がん、声門下がん)、鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞がんなど)、口腔がん(舌がんなど)、唾液腺がん、甲状腺がんなどの診断名がつきます。この頭頸部と呼ばれる部位には、呼吸や食事など人間が生きるうえで必要な機能、さらには発声、味覚、聴覚など日常生活に重要な機能が集中しています。これらに障害が起きるとQuality of Life (QOL: 生活の質)に影響を及ぼすため、がんを治すための根治性とQOLのバランスを保った治療法が必要とされています。
*厚生労働省健康局がん・疾病対策課「令和2年全国がん登録 罹患数・率 報告」付表1.罹患数 口唇~その他および部位不明確の口唇、口腔および咽頭、鼻腔および中耳、副鼻腔、喉頭、甲状腺の合計値
アキャルックス®点滴静注250㎎について
アキャルックス®点滴静注250㎎は、キメラ型抗ヒト上皮成長因子受容体 (EGFR) モノクローナル抗体 (IgG1) であるセツキシマブと光感受物質である色素IRDye® 700DX を結合させた抗体-光感受性物質複合体からなる点滴静注用の注射剤です。アルミノックス™プラットフォームを基に開発された最初の医薬品で、一般名はセツキシマブ サロタロカンナトリウム (遺伝子組換え) です。
BioBlade®レーザシステムについて
BioBlade®レーザシステムは、アキャルックス®点滴静注250㎎と組み合わせて使用するレーザ装置です。レーザシステムは、BioBlade®レーザ、必要な付属品、ディフューザー及びニードルカテーテルにより構成されます。ディフューザーは、照射を行うための補助器具で、光ファイバーの前方から照射を行う表面照射用のフロンタルディフューザーと、光ファイバーの側面から照射を行う組織内照射用のシリンドリカルディフューザーの2種類があります。ニードルカテーテルは、組織内治療において、シリンドリカルディフューザーを導入するために使用します。
参考
1) 臨床頭頸部癌学 改訂第2版 2022年 南江堂
2) Michelle D. W, et al. Genetic and Expression Analysis of HER-2 and EGFR Genes in Salivary Duct Carcinoma: Empirical and Therapeutic Significance. Clin Cancer Res (2010) 16 (8): 2266–2274. doi: 10.1158/1078-0432.CCR-09-0238
3) Guazzo E, et al. Therapeutic implications of immune-profiling and EGFR expression in salivary gland carcinoma. Head Neck. 2021;43(3):768-777. doi: 10.1002/hed.26529