- 抗PD-L1抗体-IR700複合体である「RM-0256」のin vitro試験で、同複合体を用いた光免疫療法は「PD-L1を発現する腫瘍細胞の破壊」と「PD-L1を発現する免疫抑制細胞の排除」の2つの作用機序を有していることを示した
- In vivo試験で、「抗PD-L1抗体に感受性のある腫瘍」に対する本治療は、抗PD-L1抗体単独群に比べより効果的な腫瘍増殖抑制を示し、さらに「抗PD-L1抗体に耐性のある腫瘍」に対しても、対照群に比べ有意な腫瘍増殖抑制を示した
- カニクイザルにおけるGLP毒性試験で、「RM-0256」の臨床的忍容性が確認された
Rakuten Medical, Inc.(本社:米国 カリフォルニア州 サンディエゴ/以下、楽天メディカル)は、9月20日(日本時間)に開催された「第83回日本癌学会学術総会」(以下、JCA2024)において、「PD-L1を標的とした光免疫療法」(以下、本治療)に関する非臨床試験の研究結果について発表したことをお知らせします。
JCA2024における口頭発表の概要
Abstract Title: PD-L1 photoimmunotherapy kills immunosuppressive myeloid cells to activate local and systemic antitumor immunity
Presenter: Amy H. Thorne, Ph.D. (Rakuten Medical, Inc.)
Abstract Number: 30050
- In vitro 試験において、本治療は「PD-L1が発現している腫瘍細胞の破壊」および、腫瘍関連マクロファージ(Tumor-associated macrophages: TAMs)や骨髄由来抑制細胞(Myeloid-derived suppressor cells: MDSCs)などの「PD-L1が発現している免疫抑制細胞の排除」の2つの作用機序を有していることが示されました。加えて、免疫チェックポイント阻害薬として作用する可能性も示唆されました。
- In vivo 試験において、「抗PD-L1抗体に感受性のある腫瘍マウスモデル」に対する本治療群と抗PD-L1抗体単独群を比較した場合、本治療はより効果的な腫瘍増殖抑制を示しました。「抗PD-L1抗体に耐性のある腫瘍マウスモデル」に対する本治療群と生理食塩水群を比較した場合、本治療は有意な腫瘍増殖抑制を示しました。
- In vivo 試験において、本治療は腫瘍微小環境内の免疫抑制細胞を排除して、免疫のバランスに影響を与え、免疫チェックポイント阻害を維持することでCD8陽性T細胞の活性化を高めることが示唆されました。
- カニクイザルに反復投与を実施した、GLP(Good Laboratory Practice)毒性試験において「RM-0256」の忍容性が確認されました。
楽天メディカルは、本非臨床試験データをもとに、新たな臨床開発について検討しています。
RM-0256について
「RM-0256」は、楽天メディカルが開発した抗PD-L1抗体(免疫チェックポイント阻害薬)と光感受性物質(光に反応する物質)であるIRDye® 700DX(IR700)を結合させた複合体で、PD-L1を発現する細胞に特異的に集積します。PD-L1は、T細胞の表面に多く発現するPD-1に結合することで、T細胞が持つ腫瘍細胞などへの攻撃能力(抗腫瘍免疫応答)を抑制するタンパク質です1。このタンパク質は、悪性黒色腫(メラノーマ)、肺がん、尿路上皮がん、消化器がん、婦人科がん、乳がん、頭頸部がんなど多くの固形がんで発現しています2。また、腫瘍細胞だけでなく、腫瘍微小環境内の免疫抑制細胞である腫瘍関連マクロファージ(Tumor associated macrophages: TAMs)や骨髄由来抑制細胞(Myeloid-derived suppressor cells: MDSCs)などにも発現しています3。「RM-0256」を用いた「PD-L1を標的とした光免疫療法」の非臨床試験では、標的腫瘍細胞の破壊と免疫抑制細胞の排除により、抗腫瘍免疫応答の活性化が示唆されました。また、「RM-0256」によるPD-L1とPD-1の結合の阻害も示され、免疫チェックポイント阻害薬としての全身的な作用により、本治療後の抗腫瘍免疫応答をさらに高める可能性が期待されます。
楽天メディカルについて
楽天メディカルは、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカルは、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社を構える米国に加え、日本、台湾、スイス、インドの世界5カ国/地域に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、Rakuten Medical, Inc.(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/ をご覧ください。
アルミノックス™プラットフォームについて
アルミノックス™プラットフォームは、治療技術基盤の名称であり、米国国立がん研究所の小林久隆先生らが開発したがん光免疫療法が基となっています。同プラットフォームは、医薬品、医療機器、医療技術、その他周辺技術を総合的に利用した技術基盤であり、楽天メディカルは、これに基づき製品や治療法の開発を進めています。同プラットフォームを用いた治療は、「薬剤の投与」と「光の照射」の 2 段階で構成されます。薬剤は、光感受性物質 (光に反応する物質) と、キャリア (特定の細胞に選択的に集積する成分) から組成される複合体です。同薬剤を投与し、特定の細胞に選択的に集積させた後、その細胞に特定の光を照射することで光感受性物質を活性化させ、生化学・物理学的プロセスにより、特定の細胞を壊死させ、あるいは、排除します。
フォワード・ルッキング・ステートメント(将来予想に関する記述)
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参考:
- Chunwan Lu, Priscilla S. Redd, Jeffrey R. Lee, Natasha Savage & Kebin Liu (2016) The expression profiles and regulation of PD-L1 in tumor-induced myeloid-derived suppressor cells, OncoImmunology, 5:12, DOI: 10.1080/2162402X.2016.1247135
- Kythreotou A, Siddique A, Mauri FA, et al. PD-L1Journal of Clinical Pathology 2018;71:189-194. https://jcp.bmj.com/content/71/3/189
- Shklovskaya, E.; Rizos, H. Spatial and Temporal Changes in PD-L1 Expression in Cancer: The Role of Genetic Drivers, Tumor Microenvironment and Resistance to Therapy. Int. J. Mol. Sci. 2020, 21, 7139. https://doi.org/10.3390/ijms21197139