- 婦人科系がんに対する光免疫療法の初の臨床試験
- AMEDによる助成対象課題に採択
北海道大学病院は、婦人科系がんに対する光免疫療法の医師主導治験(jRCT2011240034、以下「本治験」)を10月1日に開始しました。Rakuten Medical, Inc.(以下「楽天メディカル」)は、本治験に必要となる薬剤および機器を提供します。
本治験は、「局所進行・再発外陰癌・腟癌・子宮頸癌に対するASP-1929を用いた光免疫療法の安全性・有効性を評価する単群・非盲検第 II 相臨床試験」として、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(Japan Agency for Medical Research and Development:AMED)より、令和6年度「革新的がん医療実用化研究事業」の「【領域3-3】適応拡大等による革新的がん治療薬(医薬品)の開発・薬事承認を目指した医師主導治験」における助成対象課題に採択されています。
光免疫療法は、薬剤と機器によるレーザ光照射により、がん細胞などの狙った細胞を選択的かつ迅速に壊死させる治療法です。本治験に用いる薬剤(以下「本薬剤」)は、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に集積する抗EGFR抗体と光感受性物質である色素との抗体-光感受性物質複合体です。本薬剤が集積した細胞(標的細胞)にレーザ光を照射すると、光化学反応を起こし、標的細胞の細胞膜を破壊して細胞死を誘導します。本薬剤は、「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」に対して薬事承認を受けており、北海道大学病院では対象となる頭頸部がん患者さんに対して本薬剤を用いた光免疫療法を保険診療として行っています。本治験は、この光免疫療法を婦人科系がんに対して検討する世界初の臨床試験になります。
外陰、腟、子宮頸がんの国内での年間罹患数は、それぞれ、250人、150人、1万人ほどです1。これらのがんは扁平上皮がんが主体であり、70-95 %の外陰、腟、子宮頸がんがEGFR陽性とされています2-4。同じく扁平上皮がんを主体とする頭頸部がんでは90%以上がEGFR陽性との報告があります5。また、外陰・腟・子宮頸がんは、頭頸部がんと同様、体表に近いことから、レーザ光照射が比較的容易であることが想定されます。
本治験を率いる北海道大学病院 婦人科 教授の渡利 英道 先生は、本治験の実施にあたり、以下のように述べています。「再発・進行の外陰・腟・子宮頸がんに対する既存の治療法は、必ずしも十分な治療効果をもたらすものではなく、時に患者さんの生活の質(Quality of Life:QOL)を大きく損ねます。なかでも患者数の多い子宮頸がんでは EGFR が高発現の腫瘍ほど予後不良なことが知られており、EGFRを標的とした新たな治療選択肢が必要とされています。光免疫療法は、頭頸部がんに対するリアル・ワールド・データも蓄積されつつあり、その高い選択性は外陰・腟・子宮頸がんに対しても希望の光になりうると考えています。」
- 日本産科婦人科学会 婦人科腫瘍委員会 2018年-2020年患者年報, https://www.jsog.or.jp/modules/committee/index.php?content_id=7#databook (2019-2021)
- Garganese, G. et al. The Vulvar Immunohistochemical Panel (VIP) Project: Molecular Profiles of Vulvar Squamous Cell Carcinoma. Cancers (Basel) 13 (2021). https://doi.org:10.3390/cancers13246373
- Brunner, A. et al. Expression of epidermal growth factor receptor and vascular endothelial growth factor in vaginal squamous cell cancer. Am J Obstet Gynecol 204, 171 e171-176 (2011). https://doi.org:10.1016/j.ajog.2010.09.031
- proteinatlas.org, H. P. A. EGFR, cervical cancer, Human pathology, Human Protein Atlas, https://www.proteinatlas.org/ENSG00000146648-EGFR/pathology/cervical+cancer#ihc
- Assuntina G Sacco et al. Current Treatment Options for Recurrent or Metastatic Head and Neck Squamous Cell Carcinoma. 2015; 33(29):3305-13
北海道大学病院について
北海道大学病院は、1921年11月開院の北海道帝国大学医学部附属病院(1949年より北海道大学医学部附属病院へ改名)と、1967年設置の北海道大学歯学部附属病院とが統合され、2003年に現在の組織となりました。広大で緑豊かな北海道大学キャンパスの中で、医育大学として医療人の養成をおこなうとともに、北海道・札幌の高度な医療の実践を担い、かつ日本や世界の医学研究をリードしてきました。医科31科、歯科12科の診療科からなり、938病床数を有する、本邦でも屈指の規模の医療機関のひとつです。詳しくはhttps://www.huhp.hokudai.ac.jpをご覧ください。
楽天メディカルについて
楽天メディカルは、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカルは、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社を構える米国に加え、日本、台湾、スイス、インドの世界5カ国/地域に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、Rakuten Medical, Inc.(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/をご覧ください。