- 米国で最初の登録患者に治験治療を実施
- 米国に続き、日本および台湾でも患者登録を開始予定
Rakuten Medical, Inc.(米国 カリフォルニア州 サンディエゴ)は、再発頭頸部扁平上皮がんに対するファーストライン(一次)治療として、ASP-1929を用いたアルミノックス治療(光免疫療法)と抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブとの併用療法を検討する国際共同第Ⅲ相臨床試験(治験番号:ASP-1929-381/略称:ECLIPSE*/ClinicalTrials.gov Identifier:NCT06699212)を開始しましたので、お知らせします。最初の登録患者への治験治療がAvera Cancer Institute(米国 サウスダコタ州 スーフォールズ)で実施されました。本臨床試験は米国のほか、日本と台湾でも患者登録が予定されており、他の国・地域での開始も検討中です。
本ASP-1929-381試験は、多施設共同無作為化オープンラベル第Ⅲ相臨床試験です。遠隔転移のない局所再発の頭頸部扁平上皮がんに対する一次治療として、ASP-1929を用いた光免疫療法とペムブロリズマブとの併用療法の有効性と安全性を評価します。グローバルで約400人の患者登録を予定しており、登録患者は、ASP-1929を用いた光免疫療法とペムブロリズマブとの併用群、もしくは治験担当医が選択するペムブロリズマブを用いた標準治療(単剤もしくは化学療法との併用)群に無作為に割り付けられます。
主要評価項目は全生存期間(Overall Survival:OS)で、主な副次評価項目は完全奏効率(Complete Response Rate:CRR)と全奏効率(Overall Response Rate:ORR)です。
本試験は、本併用療法に関する第Ⅰb /Ⅱ相臨床試験(ASP-1929-181試験/ClinicalTrials.gov Identifier:NCT04305795)に登録された19例の頭頸部扁平上皮がん患者における中間評価の結果(データカットオフ日:2023年8月31日)を受けて実施されるものです。本中間評価データでは、OS中央値は未到達で、24ヵ月時点の推定全生存率は52.4%、安全性プロファイルは概ね良好でした。
頭頸部がんは、世界で7番目に多いがんで、うち90%以上が扁平上皮がんです1。頭頸部扁平上皮がんの60%以上が局所進行性(III期またはIV期)で、うち15~40%は再発しますが、そうした患者の予後は不良で5年生存率は50%未満です1。
Avera Cancer Instituteにおける本試験の治験治療担当医師の一人であるAvera Medical Group Ear, Nose & Throat - Head and Neck SurgeryのKristen Coffroth医師は、以下のように述べています。「光免疫療法は、標的細胞を生物物理学的に破壊するというユニークな作用機序を持っています。ペムブロリズマブは、再発・転移性頭頸部扁平上皮がんに対する全身療法の主流となっています。ASP-1929を用いた光免疫療法とペムブロリズマブとの併用は、相乗的な抗腫瘍効果を発揮する可能性があります。本試験でその有用性を評価することにより、局所再発頭頸部がんの治療に新たな光が差し込むことを期待します」
Avera Cancer Instituteにおける本試験の治験責任医師であり、米国外科学会フェロー(FACS)であるAvera Medical Group Ear, Nose & Throat - Head and Neck SurgeryのWilliam Chad Spanos医師は、次のように述べています。「光免疫療法という最先端の治療技術がもつ革新性と高い選択性に、非常に感銘を受けています。これをペムブロリズマブと組み合わせることで、再発頭頸部がんの一次治療の選択肢を広げる可能性があります。私たちの施設でこの画期的な臨床試験を開始できることを嬉しく思いますし、本試験を通じて、この難しい病気に直面している患者さんの治療を前進させたいと考えています」
楽天メディカル 副会長 兼 チーフ・エグゼクティブ・オフィサー(CEO)の三木谷 浩史は、以下のように述べています。「革新的な治療法により、頭頸部がん患者さんはもちろん、すべてのがん患者さんの治療と生活への貢献を目指す私たちにとって、本試験の開始は非常に重要なマイルストーンとなります。先行する試験での有望なデータから、ASP-1929を用いたアルミノックス治療(光免疫療法)とペムブロリズマブとの併用療法は、再発頭頸部がんにおける治療成績を大きく改善できる可能性があると確信しています」
* ECLIPSE: Eliminating Cancer with Laser Illumination and PhotoSEnsitizer
1. Chow LQM. Head and Neck Cancer. N Engl J Med. 2020;382(1):60-72. doi:10.1056/NEJMra1715715
楽天メディカルについて
楽天メディカルは、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカルは、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社を構える米国に加え、日本、台湾、スイス、インドの世界5カ国/地域に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、Rakuten Medical, Inc.(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/をご覧ください。
アルミノックス™プラットフォームについて
アルミノックス™プラットフォームは、治療技術基盤の名称であり、米国国立がん研究所の小林久隆先生らが開発したがん光免疫療法が基となっています。同プラットフォームは、医薬品、医療機器、医療技術、その他周辺技術を総合的に利用した技術基盤であり、楽天メディカルは、これに基づき製品や治療法の開発を進めています。同プラットフォームを用いた治療は、「薬剤の投与」と「光の照射」の 2 段階で構成されます。薬剤は、光感受性物質 (光に反応する物質) と、キャリア (特定の細胞に選択的に集積する成分) から組成される複合体です。同薬剤を投与し、特定の細胞に選択的に集積させた後、その細胞に特定の光を照射することで光感受性物質を活性化させ、生化学・物理学的プロセスにより、特定の細胞を壊死させ、あるいは、排除します。
ASP-1929について
楽天メディカル社がアルミノックス™プラットフォームを基に開発した最初の薬剤であるASP-1929(一般名:セツキシマブ サロタロカンナトリウム)は、抗体であるセツキシマブに光感受性物質である色素IRDye® 700DXが結合した抗体-光感受性物質複合体で、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に集積することが確認されています。EGFRは、頭頸部がん、乳がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん、すい臓がんなど様々な種類の固形がんに発現していることが知られています。ASP-1929ががん細胞に集積した後、波長690 nmのレーザ光を専用のレーザ照射システムを用いて照射することにより、ASP-1929が局所的に励起され光化学反応を起こします。これにより細胞膜が傷害されたがん細胞が選択的に壊死すると考えられています。日本において、先駆け審査指定制度の対象品目として指定され、かつ条件付き早期承認制度の適用のもと申請を行い、2020年9月に「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能または効果とする製造販売承認を厚生労働省から取得しています。日本以外の規制当局による製造販売承認は受けておりません。また、本剤を用いたアルミノックス治療(光免疫療法)と抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブとの併用療法について、再発頭頸部扁平上皮がんに対する一次治療としての有効性・安全性を検討する国際共同第Ⅲ相臨床試験を実施しています。