- 再発・転移性の頭頸部扁平上皮がんにおいて、OS中央値25.6ヵ月などの有望な有効性と管理可能な安全性プロファイルを確認
- 再発頭頸部がんに対する一次治療として本併用療法を評価する国際共同第Ⅲ相試験が進行中
Rakuten Medical, Inc.(本社:米国 カリフォルニア州 サンディエゴ/以下、楽天メディカル)は、再発または転移性の頭頸部扁平上皮がんを対象にASP-1929を用いたアルミノックス治療(光免疫療法)とペムブロリズマブの併用療法を評価した第Ib/II相臨床試験の結果が、医学誌『Head & Neck』に掲載されたことをお知らせします。
本論文では、非盲検第Ib/II相試験(ASP-1929-181試験/ClinicalTrials.gov Identifier:NCT04305795)に登録された19例の再発または転移性の頭頸部扁平上皮がん患者における最新の中間評価結果(データカットオフ:2024年4月30日)について報告しています。本評価結果では、とりわけ全生存期間(OS)において有望なデータが示され、忍容性も概ね良好でした。また、探索的バイオマーカー解析では、本併用療法が標的病変における抗腫瘍免疫を増強したことで、奏効が持続した可能性が示唆されました。
論文タイトル:Safety and Efficacy Findings From a Phase Ib/II Study of ASP-1929 Photoimmunotherapy With Pembrolizumab in Recurrent and/or Metastatic Head and Neck Squamous Cell Carcinoma
DOI:https://doi.org/10.1002/hed.70014
主要な試験結果(データカットオフ:2024年4月30日)
有効性(N=18*):
- OS中央値:25.6ヵ月(95% CI: 14.6–NE)
- 全奏効率(ORR):27.8%(95% CI: 9.7–53.5)、うち完全奏効(CR):22.2%(95% CI: 6.4–47.6)
- 病勢コントロール率(DCR):61.1%(95% CI: 35.7–82.7)
- 奏効までの中央値:1.4ヵ月、うち複数例で初回評価時に奏効を確認
- すべてのCRが16ヵ月以上持続し、データカットオフ時点でも継続
* 登録された19例のうち、ASP-1929による光免疫療法とペムブロリズマブの両方を受けた18例(光免疫療法評価対象集団)を対象に有効性を解析
安全性(N=19)
- 全例で治療中に発現した有害事象(TEAE)が1件以上発現
- 主なTEAE:疲労(57.9%)、口腔内痛(52.6%)、便秘(36.8%)
- 重篤なTEAEは約63.2%に認められ、主なものは嚥下障害と舌浮腫(各10.5%)
- 治療関連死亡例はなく、全体の安全性プロファイルはASP-1929光免疫療法およびペムブロリズマブの過去の試験結果と一致
探索的バイオマーカー解析
- 生検において、治療病変部位におけるCD8陽性T細胞の増加とEGFR発現の低下を確認
- 奏効例においてB細胞経路の活性化が認められ、腫瘍微小環境が抗腫瘍免疫に有利に変化している可能性を示唆
本論文の筆頭著者であるトーマス・ジェファーソン大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学 Professor兼ChairのDavid M. Cognetti医師は、以下のように述べています。
「再発または転移性の頭頸部扁平上皮がんに対する治療選択肢は限られていることを踏まえると、本試験結果は意義深いものです。光免疫療法とペムブロリズマブの併用療法により、持続的な奏効に加え、2年以上のOS中央値が得られたことは、標準治療が適さない患者さんにも予後の改善が期待できる治療選択肢を提示できる可能性があります」
これらの結果を受け、楽天メディカルは再発頭頸部扁平上皮がんに対する一次治療として本併用療法をさらに検討するための国際共同第Ⅲ相臨床試験を実施しています(ASP-1929-381試験/ClinicalTrials.gov Identifier:NCT06699212)。現在、米国、台湾、日本における15以上の施設で患者登録を進めています。今後、これらの地域での実施施設を拡大するとともに、ウクライナやポーランドなどの東ヨーロッパでも本試験を開始する予定です。当社は、本第Ⅲ相試験の結果をもとに、早ければ2028年にも米国でASP-1929の申請を行うことを目指しています。
アルミノックス治療(光免疫療法)は、国内での実臨床下における観察研究から、切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がんに対して、局所制御を目的とした治療として有用であることが示唆されています。今回の併用療法により、さらなる局所制御、頭頸部がつかさどる重要な機能の温存、生存期間の延長につながる可能性があります。
ASP-1929-181試験について
ASP-1929-181試験は、EGFRが発現している進行性の固形がんを対象に、ASP-1929を用いた光免疫療法とペムブロリズマブなどの抗PD-1抗体との併用療法について検討する非盲検第Ib/II相臨床試験です。本試験には、再発局所進行性または転移性の頭頸部扁平上皮がんを対象としたサブプロトコルがあり、本論文はそのサブプロトコルにおける結果を報告するものです。
ASP-1929-381試験について
ASP-1929-381試験は、多施設共同無作為化オープンラベル第Ⅲ相臨床試験です。遠隔転移のない局所再発の頭頸部扁平上皮がんに対する一次治療として、ASP-1929を用いた光免疫療法とペムブロリズマブとの併用療法の有効性と安全性を評価します。グローバルで412人の患者登録を予定しており、登録患者は、ASP-1929を用いた光免疫療法とペムブロリズマブとの併用群、もしくは治験担当医が選択するペムブロリズマブを用いた標準治療(単剤もしくは化学療法との併用)群に無作為に割り付けられます。主要評価項目は全生存期間(Overall Survival:OS)で、主な副次評価項目は完全奏効率(Complete Response Rate:CRR)と全奏効率(Overall Response Rate:ORR)です。
楽天メディカルについて
楽天メディカルは、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカルは、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社を構える米国に加え、日本、台湾、スイス、インドの世界5カ国/地域に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、Rakuten Medical, Inc.(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/ をご覧ください。
アルミノックス™プラットフォームについて
アルミノックス™プラットフォームは、治療技術基盤の名称であり、米国国立がん研究所の小林久隆先生らが開発したがん光免疫療法が基となっています。同プラットフォームは、医薬品、医療機器、医療技術、その他周辺技術を総合的に利用した技術基盤であり、楽天メディカルは、これに基づき製品や治療法の開発を進めています。同プラットフォームを用いた治療は、「薬剤の投与」と機器を用いた「光の照射」の 2 段階で構成されます。薬剤は、光感受性物質 (光に反応する物質) と、キャリア (特定の細胞に選択的に集積する成分) から組成される複合体です。機器は、光源となるレーザ装置、レーザ光を照射部位に届けるディフューザー、ディフューザーを組織内に導入するためのニードルカテーテル等により構成されます。薬剤を投与し、標的細胞に選択的に集積させた後、その細胞に機器を用いて特定波長の光を照射することで光感受性物質を活性化させ、生化学・物理学的プロセスにより、標的細胞を壊死させ、あるいは、排除します。
ASP-1929について
楽天メディカルがアルミノックス™プラットフォームを基に開発した最初の薬剤であるASP-1929(一般名:セツキシマブ サロタロカンナトリウム)は、抗EGFR抗体であるセツキシマブに光感受性物質である色素IRDye® 700DXが結合した抗体-光感受性物質複合体で、上皮成長因子受容体(EGFR)を発現する細胞に特異的に集積することが確認されています。EGFRは、頭頸部がん、乳がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん、すい臓がんなど様々な種類の固形がんに発現していることが知られています。ASP-1929が標的がん細胞に集積した後、波長690 nmのレーザ光を専用のレーザ照射システムを用いて照射することにより、ASP-1929が局所的に励起され光化学反応を起こします。これにより細胞膜が傷害されたがん細胞が選択的に壊死すると考えられています。日本において、先駆け審査指定制度の対象品目として指定され、かつ条件付き早期承認制度の適用のもと申請を行い、2020年9月に「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能または効果とする製造販売承認を厚生労働省から取得しています。日本以外の規制当局による製造販売承認は受けておりません。また、本剤を用いたアルミノックス治療(光免疫療法)と抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブとの併用療法について、再発頭頸部扁平上皮がんに対する一次治療としての有効性・安全性を検討する国際共同第Ⅲ相臨床試験を実施しています。