- 良好な治療結果と相関する可能性のあるバイオマーカーが示唆された
- 腫瘍における薬剤取り込み率の新たな測定手法により、臨床データにおいて初めて薬剤の良好な取り込みが高精度で確認された
- 楽天グループ株式会社のグローバル研究開発部門の一つである楽天技術研究所 Bengaluruが開発したAI技術を活用
楽天メディカル社(本社:米国カリフォルニア州サンディエゴ/以下、楽天メディカル)は、2023年11月3日~5日に米国サンディエゴで開催されたがん免疫学会(Society for Immunotherapy of Cancer:SITC)の第38回年次総会(以下、SITC2023)において、アルミノックス治療(光免疫療法)の治療成績に関連しうる二つの研究結果がポスター発表されたことをお知らせします。
両研究では、サンプルとして、ASP-1929を用いたアルミノックス治療と抗PD-1抗体の併用療法に関する第Ⅰb /Ⅱ相臨床試験(ASP-1929-181試験/ClinicalTrials.gov Identifier:NCT04305795)の患者データが使用されました。ASP-1929-181試験は、再発・転移性の頭頸部扁平上皮がんおよび進行性・転移性の皮膚扁平上皮がんを対象とした非盲検試験で、2023年7月に有望な早期評価データが米国頭頸部学会(AHNS)で発表されています。SITC2023で発表された研究では、AHNSでのデータのさらなる解釈のために、楽天グループ株式会社の子会社であるRakuten India Enterprise Private Limitedの傘下でグローバル研究開発を担うRakuten Institute of Technology Bengaluru(以下、楽天技術研究所 Bengaluru)が開発したAI技術が活用されました。楽天メディカルと楽天技術研究所 Bengaluruは、2020年よりAIを活用した患者データの分析に関する共同研究を行っています。
SITC2023でのポスター発表の概要
ポスター名:Development of an image-based tumor microenvironment analysis coupled with peripheral flow cytometry reveals a distinct immune cell phenotype in responder patients in the Phase 1b/2 study ASP-1929-181
抄録番号:83
一つ目のポスターは、アルミノックス治療を受けた患者の免疫特性を、AIを用いたマルチプレックス免疫蛍光イメージングと末梢血フローサイトメトリーにより、奏効が認められた患者群(奏効群)と非奏効群とで比較した研究です。本研究結果によると、ベースラインでの血中のCD8陽性T細胞全体の低頻度が、良好な治療結果と相関するバイオマーカーである可能性が示唆されました。興味深いことに、CD8陽性T細胞における免疫チェックポイント分子PD-1の発現頻度の増加も良好な治療結果と相関する可能性が示唆されました。さらに腫瘍においては、解析された22名の全ての患者において治療期間中の細胞傷害性CD8陽性T細胞の増加が確認され、アルミノックス治療後の免疫活性化が示唆されました。
ポスター名:Development of a novel, cellular-level drug uptake quantification pipeline for accurate quantification of fluorescence-conjugated therapeutics: Data from the Phase 1b/2 open-label study ASP-1929-181
抄録番号:1307
二つ目のポスターは、アルミノックス治療に用いる薬剤の取り込み率測定に関するものです。本研究では、AIを使用した腫瘍検出モデルと細胞セグメンテーションによる新たな薬剤定量化手法により、薬剤の標的腫瘍への取り込みを正確かつ細胞レベルで測定できる可能性が示されました。また、本手法を用いた測定により、臨床データにおいて初めて薬剤の腫瘍への良好な取り込み(>50-100%)が確認されました。薬剤取り込み率の解明より、今後の非臨床および臨床試験において、薬剤投与量と治療反応との関連のさらなる理解に繋がる可能性があります。
楽天メディカル社について
楽天メディカル社は、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカル社は、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社がある米国に加え、日本、オランダ、台湾、スイス、インドの世界6カ国に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、楽天メディカル社(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/をご覧ください。
アルミノックス™プラットフォームについて
アルミノックス™プラットフォームは、治療技術基盤の名称であり、米国国立がん研究所の小林久隆先生らが開発したがん光免疫療法が基となっています。同プラットフォームは、医薬品、医療機器、医療技術、その他周辺技術を総合的に利用した技術基盤であり、楽天メディカル社は、これに基づき製品や治療法の開発を進めています。同プラットフォームを用いた治療は、「薬剤の投与」と「光の照射」の 2 段階で構成されます。薬剤は、光感受性物質 (光に反応する物質) と、キャリア (特定の細胞に選択的に集積する成分) から組成される複合体です。同薬剤を投与し、特定の細胞に選択的に集積させた後、その細胞に特定の光を照射することで光感受性物質を活性化させ、生化学・物理学的プロセスにより、特定の細胞を壊死させ、あるいは、排除します。
ASP-1929について
楽天メディカル社がアルミノックス™プラットフォームを基に開発した最初の薬剤であるASP-1929(一般名:セツキシマブ サロタロカンナトリウム)は、抗体であるセツキシマブに光感受性物質である色素IRDye® 700DXが結合した抗体-光感受性物質複合体で、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に集積することが確認されています。EGFRは、頭頸部がん、乳がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん、すい臓がんなど様々な種類の固形がんに発現していることが知られています。ASP-1929ががん細胞に集積した後、波長690 nmのレーザ光を専用のレーザ照射システムを用いて照射することにより、ASP-1929が局所的に励起され光化学反応を起こします。これにより細胞膜が傷害されたがん細胞が選択的に壊死すると考えられています。本剤を用いたアルミノックス治療は、2018年1月に米国食品医薬品局からファストトラックに指定され、現在局所再発頭頸部扁平上皮がんの国際共同第Ⅲ相臨床試験を実施しています。日本において、先駆け審査指定制度の対象品目として指定され、かつ条件付き早期承認制度の適用のもと申請を行い、2020年9月に「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能または効果とする製造販売承認を厚生労働省から取得しています。日本以外の規制当局による承認は受けておりません。