楽天メディカル株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役会長:三木谷 浩史/以下、楽天メディカル)は、医療機器「BioBlade®レーザ WR」(以下、WR)および「BioBlade®サイドファイヤーディフューザー」(以下、サイドファイヤーディフューザー)を用いた、新たなレーザ光照射方法による日本初の頭頸部アルミノックス治療(光免疫療法、以下、本治療)が、11月中旬に藤田医科大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科にて実施されたことをお知らせします。
WRおよびサイドファイヤーディフューザーは、BioBlade®レーザシステムに新たに追加された構成品で、2024年11月1日に販売を開始しました。WRは、既存品よりも小さい照射スポット径(7~17mm)の設定ができ、短い照射距離(12~30mm)で表在性病変に対するレーザ光照射が行えます。サイドファイヤーディフューザーは、光ファイバーの端部より側面からレーザ光を出し、表在性病変に対して垂直に照射を行うための医療機器です。今回、両製品を用いることで、下咽頭梨状陥凹(※1)に発生した腫瘍に対して、より適正な照射を実現しました。
本治療を行った藤田医科大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 教授 加藤 久幸 医師は次のように述べています。「下咽頭がんは、Field cancerization(※2)による発生のため、他の頭頸部がんや食道がんと重複している場合もあり、下咽頭がんの治療前に、手術や放射線治療の既往がある患者さんも少なくありません。再発下咽頭がんでは、前治療歴から喉頭全摘が検討されるケースがありますが、QOL低下が起こります。こういった症例に対しては、一つの治療選択肢として頭頸部アルミノックス治療が検討されますが、既存品では適正照射が難しい場合がありました。今までの表面照射と組織内照射に加え、小さなスポット径で側方向に垂直照射が可能になり、さまざまな照射方法を組み合わせることで、今回は、下咽頭の腫瘍に対しても適正照射を行うことができました」
頭頸部アルミノックス治療は、医薬品「アキャルックス®点滴静注250㎎」と医療機器レーザ装置「BioBlade®レーザシステム」を用いた治療法です。頭頸部のがん細胞の表面に多く発現する上皮成長因子受容体(EGFR:epidermal growth factor)に特異的に集積する抗EGFR抗体と光感受性物質である色素「IRDye® 700DX」(以下、IR700)で構成される同医薬品を投与し、がん細胞に結合させた後に、レーザ光を照射することでIR700が反応し、がん細胞を選択的に死滅させます。2020年9月に、本治療に用いる医薬品「アキャルックス®点滴静注250㎎」および、医療機器レーザ装置「BioBlade®レーザシステム」は、世界に先駆けて日本で「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能・効果とし、製造販売承認を取得しました。2021年1月より本治療が提供開始され、46都道府県の約170か所の約400名の治療医によって累計約700回の治療が実施されました(10月末現在)。さまざまな病変に対して本治療が提供される中で、医療従事者の皆さんから照射技術向上のためのご意見を伺い、医療機器の開発を進めてきました。その取り組みの一つとして、2023年9月に販売開始した「BioBlade®ディフューザー用ガイド管」、およびサイドファイヤーディフューザーの開発段階で、適正な照射を評価するための試験を藤田医科大学病院で実施いただきました。
なお、楽天メディカルはWRおよびサイドファイヤーディフューザーを治験使用機器として、国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院で実施されている医師主導治験「既存治療で根治が期待できない食道がん患者を対象としたASP-1929を用いた光免疫療法(PIT)の安全性・有効性を検討する第Ib/II相臨床試験」(jRCT2080224666)と、国立大学法人 北海道大学病院で実施されている医師主導治験「局所進行・再発外陰癌・腟癌・子宮頸癌に対するASP-1929を用いた光免疫療法の安全性・有効性を評価する単群・非盲検第II相試験」(jRCT2011240034)に提供しています。
楽天メディカルは、医療従事者の皆さんと連携し、さらなる医療機器の開発を進め、光照射のバリエーションを増やすことで、一人でも多くのがん患者さんにアルミノックス治療をお届けすることを目指します。
※1:下咽頭の亜部位は「梨状陥凹(りじょうかんおう)」「後壁(こうへき)」「輪状後部(りんじょうこうぶ)」の3つに分類されており、多くの下咽頭がんは「梨状陥凹」に生じるとされています1。
※2: 「Field cancerization」とは、喫煙や飲酒など共通のがん誘発因子により、複数の領域にまたがり、広く発がんする現象です。
参考:
- 臨床頭頸部癌学 改訂第2版, 南江堂, 東京, 2022.
楽天メディカル株式会社について
楽天メディカルは、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカルは、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社を構える米国に加え、日本、台湾、スイス、インドの世界5カ国/地域に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、Rakuten Medical, Inc.(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/をご覧ください。
頭頸部(とうけいぶ)がんについて
日本では、年間約45,000人*の方が頭頸部がんを発症しています。頭頸部がんとは、頭から鎖骨までの範囲に含まれるがんの総称です(脳と目は除く)。頭頸部は大きく分けて鼻、口腔、咽頭、喉頭といった器官で構成されており、発生部位により、咽頭がん(上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん)、喉頭がん(声門がん、声門上がん、声門下がん)、鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞がんなど)、口腔がん(舌がんなど)、唾液腺がん、甲状腺がんなどの診断名がつきます。この頭頸部と呼ばれる部位には、呼吸や嚥下など人間が生きるうえで必要な機能、さらには発声、味覚、聴覚など日常生活に重要な機能が集中しています。これらに障害が起きるとQuality of Life (QOL: 生活の質)に影響を及ぼすため、がんを治すための根治性とQOLのバランスを保った治療法が必要とされています。
*厚生労働省健康局がん・疾病対策課「令和2年全国がん登録 罹患数・率 報告」付表1.罹患数 口唇~その他および部位不明確の口唇、口腔および咽頭、鼻腔および中耳、副鼻腔、喉頭、甲状腺の合計値
アキャルックス®点滴静注250㎎について(開発コード:ASP-1929)
アキャルックス®点滴静注250㎎(一般名:セツキシマブ サロタロカンナトリウム)は、キメラ型抗ヒト上皮成長因子受容体 (EGFR) モノクローナル抗体 (IgG1) であるセツキシマブと光感受物質である色素IRDye® 700DX を結合させた抗体-光感受性物質複合体からなる点滴静注用の注射剤です。アルミノックス™プラットフォームを基に開発された最初の医薬品で、一般名はセツキシマブ サロタロカンナトリウム (遺伝子組換え) です。
BioBlade®レーザシステムについて
BioBlade®レーザシステムは、アキャルックス®点滴静注250㎎と組み合わせて使用するレーザ装置です。レーザシステムは、レーザ装置(BioBlade®レーザ、BioBlade®レーザ WR)、必要な付属品、ディフューザー、およびニードルカテーテルにより構成されます。ディフューザーは、照射を行うための補助器具で、光ファイバーの前方から照射を行う表面照射用のフロンタルディフューザー、光ファイバー端部より側方へ照射を行う表面照射用のサイドファイヤーディフューザー、および光ファイバー端部より円周方向に照射を行う組織内照射用のシリンドリカルディフューザーの3種類があります。BioBlade®ディフューザー用ガイド管は、湾曲することが可能でフロンタルディフューザーやサイドファイヤーディフューザーを照射部位まで誘導するために使用します。ニードルカテーテルは、組織内治療において、シリンドリカルディフューザーを導入するために使用します。