- 希少疾患である「進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍」に対して、新しい作用機序を有する新規治療法の開発を進め、早期実用化を目指す-
楽天メディカル株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役会長:三木谷 浩史/以下、楽天メディカル)は、「抗PD-L1抗体-色素複合体(RM-0256)を用いた進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍の治療薬の開発」について、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下、AMED)による令和7年度 「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」に採択されましたのでお知らせします。
上皮系皮膚悪性腫瘍は、皮膚にできる悪性腫瘍のうち、上皮細胞ががん化したものを指します。有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がん、基底細胞(きていさいぼう)がん、乳房外(にゅうぼうがい)パジェット病や、汗腺(かんせん)がん、脂腺(しせん)がん、毛包(もうほう)がんなどの皮膚付属器がんが含まれます1。日本における、上皮系皮膚悪性腫瘍の罹患者数は年間約22,000人です2。進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍に対しては薬物療法が中心ですが、免疫チェックポイント阻害薬に耐性のある患者さんには、有効な治療法がないことが課題としてあります。こうしたことから新しい作用機序を有する新規治療法が求められています。
RM-0256は、細胞表面のプログラム細胞死リガンド1(Programmed cell Death Ligand 1:PD-L1)に特異的に結合する完全ヒト型モノクローナル抗体(抗PD-L1抗体)と光感受性物質(光に反応する物質)である色素「IRDye® 700DX」との複合体で、PD-L1を発現する細胞に特異的に集積します。「PD-L1を標的とした光免疫療法」の非臨床試験では、本治療が「PD-L1を発現する腫瘍細胞の破壊」と「PD-L1を発現する免疫抑制細胞の排除」の2つの作用機序を有していることが示されました3。また、抗PD-L1抗体に耐性のある腫瘍に対する抗腫瘍効果も示されました3。
楽天メディカル独自の技術基盤である「アルミノックス™プラットフォーム」をもとに開発されたRM-0256とレーザ装置を用いて、局所および全身の抗腫瘍免疫応答を誘導することが期待される新たな治療法の開発を進め、進行・再発の上皮系皮膚悪性腫瘍に対する早期実用化を目指します。
楽天メディカル 代表取締役社長 小玉 裕之は、次のように述べています。「当社の創薬プログラム『アルミノックスパレット™』における3つ目の複合体『RM-0256』を用いた新規モダリティの開発がAMEDに採択され、大変嬉しく思います。2020年に世界に先駆けて日本で実用化されたEGFRをターゲットとする『ASP-1929』、AMEDの支援により、2023年に臨床試験を開始した制御性T細胞(Treg)をターゲットとする『RM-1995』に続き、『RM-0256』の開発も迅速に進め、新たな治療法を待っている患者さんに一日でも早く『光』をお届けできるよう努めてまいります」
「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」は、希少疾病用医薬品指定前の段階の開発を推進するため、開発費用の一部を補助するものです。楽天メディカルは、2025年度から最大3事業年度の支援を受ける予定です。2025年内に治験計画届提出を目指し、その後臨床試験を開始します。本支援事業の詳細はAMEDのウェブサイト(https://www.amed.go.jp/program/list/11/02/001_03-01.html)をご覧ください。
RM-0256について
「RM-0256」は、楽天メディカルが開発した抗PD-L1抗体(免疫チェックポイント阻害薬)と光感受性物質(光に反応する物質)であるIRDye® 700DX(IR700)の複合体で、PD-L1を発現する細胞に特異的に集積します。PD-L1は、活性化T細胞の表面に多く発現するPD-1に結合することで、T細胞が持つ腫瘍細胞などへの攻撃能力(抗腫瘍免疫応答)を抑制するタンパク質で4、多くの固形がんで発現しています5。また、腫瘍細胞だけでなく、腫瘍微小環境内の免疫抑制細胞である腫瘍関連マクロファージや骨髄由来抑制細胞などにも発現しています6。抗PD-L1抗体-色素複合体を用いた「PD-L1を標的とした光免疫療法」の非臨床試験では、標的腫瘍細胞の破壊と免疫抑制細胞の排除により、抗腫瘍免疫応答の活性化が示唆されました。また、「RM-0256」によるPD-L1とPD-1の結合の阻害も示され、免疫チェックポイント阻害薬としての全身的な作用により、本治療後の抗腫瘍免疫応答をさらに高める可能性があります。
参考:
- 日本皮膚悪性腫瘍学会編.皮膚悪性腫瘍取扱い規約 第2版.2010年8月.
- 厚生労働省健康局がん・疾病対策課「令和2年全国がん登録 罹患数・率 報告」付表1.罹患数 皮膚のその他https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001231386.pdf
- Thorne A. PD-L1 photoimmunotherapy kills immunosuppressive myeloid cells to activate local and systemic antitumor immunity. Abstract Number: 30050. The 83rd Annual Meeting of the Japanese Cancer Association. September 2024.
- Lu C, Redd PS, Lee JR, Savage N, Liu K. The expression profiles and regulation of PD-L1 in tumor-induced myeloid-derived suppressor cells. OncoImmunology 2016;5:12, DOI: 10.1080/2162402X.2016.1247135
- Kythreotou A, Siddique A, Mauri FA, Bower M, Pinato D. PD-L1. Journal of Clinical Pathology 2018;71:189-194. DOI: 10.1136/jclinpath-2017-204853
- Shklovskaya E, Rizos H. Spatial and Temporal Changes in PD-L1 Expression in Cancer: The Role of Genetic Drivers, Tumor Microenvironment and Resistance to Therapy. International Journal of Molecular Sciences 2020, 21, 7139. DOI: 10.3390/ijms21197139
楽天メディカル株式会社について
楽天メディカルは、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカルは、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社を構える米国に加え、日本、台湾、スイス、インドの世界5カ国/地域に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、Rakuten Medical, Inc.(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/をご覧ください。
アルミノックス™プラットフォームについて
アルミノックス™プラットフォームは、治療技術基盤の名称であり、米国国立がん研究所の小林久隆先生らが開発したがん光免疫療法が基となっています。同プラットフォームは、医薬品、医療機器、医療技術、その他周辺技術を総合的に利用した技術基盤であり、楽天メディカルは、これに基づき製品や治療法の開発を進めています。同プラットフォームを用いた治療は、「薬剤の投与」と「光の照射」の 2 段階で構成されます。薬剤は、光感受性物質 (光に反応する物質) と、キャリア (特定の細胞に選択的に集積する成分) から組成される複合体です。同薬剤を投与し、特定の細胞に選択的に集積させた後、その細胞に特定の光を照射することで光感受性物質を活性化させ、生化学・物理学的プロセスにより、特定の細胞を壊死させ、あるいは、排除します。