楽天メディカル株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役会長:三木谷 浩史/以下、楽天メディカル)は、6月13日~14日に開催された「第49回日本頭頸部癌学会総会・学術講演会」(以下、本学会)において、「切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部癌患者を対象としたアキャルックス®およびBioBlade®レーザシステムによる頭頸部アルミノックス治療の有効性および安全性に関する観察研究」(jRCT番号:jRCT1041210120/以下、本研究)の追加解析結果について発表しました。
本追加解析では、2021年1月から2022年9月までに実臨床下で頭頸部アルミノックス治療を開始し、本研究に登録された77例中、有効性解析対象となった71例の結果をもとに有効性に関連する因子の検討を行いました。
本学会における口頭発表の概要
演題名:頭頸部アルミノックス治療(光免疫療法)の有効性に関連すると考えられる因子の検討
演者:牧野 琢丸 医師(岡山大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科)
演題番号:O-031
発表ポイント
- RECIST ver.1.1による研究対象者ごとの全奏効率(Overall Response Rate:ORR)は、年齢別では65歳未満/65-75歳未満/75歳以上の3群間で、より若い年齢層で有意に高かった(p=0.0092)。
- ベースライン時の腫瘍体積別における評価では、腫瘍体積が中央値(3.3cm3)未満の群で腫瘍体積減少率(※1)による照射病変ごとの抗腫瘍効果が高い傾向が見られた(p=0.0602)。
- EGFR(※2)発現レベルによる症例ごとの治療効果に差はみられず、EGFRの発現状況に関わらず効果が期待できる可能性が示された。
本研究の実施施設の一つで、多くの治療実績がある岡山大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科の牧野 琢丸 先生(筆頭発表者)は次のように述べています。「効果予測因子は明らかになりませんでしたが、腫瘍体積が小さいほど抗腫瘍効果が高い傾向が見られたことやEGFRの発現レベルに関わらず治療効果が期待できる可能性が示されたことは、頭頸部アルミノックス治療の臨床的な有用性を示す重要な知見です。局所コントロールが必要な頭頸部がん患者さんにとって、本治療は意義のある選択肢であると考えます」
本研究に関する主解析の結果は、2025年1月に開催された「第34回日本頭頸部外科学会」において発表され、頭頸部アルミノックス治療が局所制御を目的とした治療として有用であることが示唆されました。同解析結果に関する発表のプレスリリースはこちら(https://rakuten-med.com/jp/news/press-releases/2025/02/04/8617/)からご覧ください。
※1:腫瘍体積減少率とは、初回の頭頸部アルミノックス治療前に測定したベースラインの腫瘍体積から最終観察(または研究中止)までの間で最も腫瘍体積が小さくなった時点の腫瘍体積を減じて、ベースラインの腫瘍体積で除した値です。腫瘍体積は、画像より3方向の腫瘍径から算出しました。
※2: EGFR(上皮成長因子受容体)とは、頭頸部のがん細胞の表面に現れるタンパク質です。このたんぱく質は、細胞の増殖を促す物質を認識して、増殖のシグナルを細胞内に送っています。
頭頸部アルミノックス治療について
本治療は、医薬品「アキャルックス®点滴静注250㎎」と医療機器レーザ装置「BioBlade®レーザシステム」を用いた治療法です。同医薬品は、頭頸部のがん細胞の表面に多くあらわれるたんぱく質に特異的に集積する抗EGFR抗体と光感受性物質である色素「IRDye® 700DX」(以下、IR700)で構成されています。同医薬品を投与し、レーザ光を当てることでIR700が反応し、がん細胞を選択的に死滅させます。これらの製品は、2020年9月に世界に先駆けて日本で「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能・効果とする製造販売承認を取得し、2021年1月より本治療の提供が開始されました。全国約180か所の耳鼻咽喉科・頭頸部外科と歯科口腔外科における約450名の治療医によって提供可能となり、900回以上の治療が実施されました(2025年5月末時点)。
楽天メディカル株式会社について
楽天メディカルは、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカルは、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社を構える米国に加え、日本、台湾、スイス、インドの世界5カ国/地域に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、Rakuten Medical, Inc.(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/をご覧ください。
アルミノックス™プラットフォームについて
アルミノックス™プラットフォームは、治療技術基盤の名称であり、米国国立がん研究所の小林久隆先生らが開発したがん光免疫療法が基となっています。同プラットフォームは、医薬品、医療機器、医療技術、その他周辺技術を総合的に利用した技術基盤であり、楽天メディカルは、これに基づき製品や治療法の開発を進めています。同プラットフォームを用いた治療は、「薬剤の投与」と「光の照射」の 2 段階で構成されます。薬剤は、光感受性物質 (光に反応する物質) と、キャリア (特定の細胞に選択的に集積する成分) から組成される複合体です。同薬剤を投与し、特定の細胞に選択的に集積させた後、その細胞に特定の光を照射することで光感受性物質を活性化させ、生化学・物理学的プロセスにより、特定の細胞を壊死させ、あるいは、排除します。
頭頸部(とうけいぶ)がんについて
日本では、年間約47,000人*の方が頭頸部がんを発症しています。頭頸部がんとは、頭から鎖骨までの範囲に含まれるがんの総称です(脳と目は除く)。頭頸部は大きく分けて鼻、口腔、咽頭、喉頭といった器官で構成されており、発生部位により、咽頭がん(上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん)、喉頭がん(声門がん、声門上がん、声門下がん)、鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞がんなど)、口腔がん(舌がんなど)、唾液腺がん、甲状腺がんなどの診断名がつきます。この頭頸部と呼ばれる部位には、呼吸や嚥下など人間が生きるうえで必要な機能、さらには発声、味覚、聴覚など日常生活に重要な機能が集中しています。これらに障害が起きるとQuality of Life (QOL: 生活の質)に影響を及ぼすため、がんを治すための根治性とQOLの両立を目指した治療法が必要とされています。
*厚生労働省健康局がん・疾病対策課「令和3年全国がん登録 罹患数・率 報告」付表1.罹患数 口唇~その他および部位不明確の口唇、口腔および咽頭、鼻腔および中耳、副鼻腔、喉頭、甲状腺の合計値
アキャルックス®点滴静注250㎎について
アキャルックス®点滴静注250㎎は、キメラ型抗ヒト上皮成長因子受容体 (EGFR) モノクローナル抗体 (IgG1) であるセツキシマブと光感受物質である色素IRDye® 700DX を結合させた抗体-光感受性物質複合体からなる点滴静注用の注射剤です。アルミノックス™プラットフォームを基に開発された最初の医薬品で、一般名はセツキシマブ サロタロカンナトリウム (遺伝子組換え) です。
BioBlade®レーザシステムについて
BioBlade®レーザシステムは、アキャルックス®点滴静注250㎎と組み合わせて使用するレーザ装置です。レーザシステムは、レーザ装置(BioBlade®レーザ、BioBlade®レーザ WR)、必要な付属品、ディフューザー、およびニードルカテーテルにより構成されます。ディフューザーは、照射を行うための補助器具で、光ファイバーの前方から照射を行う表面照射用のフロンタルディフューザー、光ファイバー端部より側方へ照射を行う表面照射用のサイドファイヤーディフューザー、および光ファイバー端部より円周方向に照射を行う組織内照射用のシリンドリカルディフューザーの3種類があります。BioBlade®ディフューザー用ガイド管は、湾曲することが可能でフロンタルディフューザーやサイドファイヤーディフューザーを照射部位まで誘導するために使用します。ニードルカテーテルは、組織内治療において、シリンドリカルディフューザーを導入するために使用します。