- 新たな対処法の開発を進め、患者さんの負担軽減に繋げる -
国立大学法人東京科学大学病院(所在地:東京都文京区、病院長:藤井 靖久/以下、東京科学大学病院)と楽天メディカル株式会社(本社:東京都世田谷区、代表取締役会長:三木谷 浩史/以下、楽天メディカル)は、共同で計画した「頭頸部アルミノックス治療(光免疫療法)における、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)のレーザ光照射前投与の浮腫予防効果に関する臨床研究」(jRCT番号:jRCTs031250140/以下、本臨床研究)について、5月1日に契約締結をしましたのでお知らせします。
東京科学大学病院が代表実施医療機関を務め、多施設共同研究として本臨床研究を実施します。本臨床研究では「切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部癌患者」における頭頸部アルミノックス治療の有害事象の一つである浮腫の予防として、非ステロイド性抗炎症薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs: NSAIDs)をレーザ光照射の前に投与し、その有効性および安全性を検討します。本臨床研究は、Rakuten Medical, Inc.(米国法人)が実施した非臨床研究(マウス)において、NSAIDsを予防的に投与することで、浮腫体積が30~50%減少することが示された1, 2ことを受け、計画されました。
実臨床下における頭頸部アルミノックス治療の関連有害事象では、喉頭浮腫や咽頭浮腫などの発現が報告されていますが、事前の気管切開等により管理されています。こうした対応は患者さんに一定の負担を伴うため、より負担の少ない新たな対処法が求められています。
本臨床研究の研究代表医師である東京科学大学病院の岡田 隆平 先生は、本治療技術に関する多くの論文発表や学会発表を行っており、基礎研究から実臨床に至るまで幅広い知見を有しています。岡田先生は、次のように述べています。「2024年から楽天メディカルと、頭頸部アルミノックス治療に伴う浮腫の軽減を検討する非臨床研究を実施していますが、さらなる有効性・安全性データの検討のため、特定臨床研究を実施することになりました。同社と連携して、本臨床研究で新たな対処法の検討を行い、本治療の安全性向上に努め、患者さんの負担軽減に繋げることを目指してまいります」
参考:
- Ma G, Gordon M, Lapetoda J, Lozano A, Amantea CM, Osada T, A. Thorne AH. Reduction in photoimmunotherapy-induced edema with COX-2 inhibition: Combatting clinically relevant adverse events without compromising efficacy. American Association for Cancer Research (AACR) Annual Meeting; April 2024; San Diego, CA.
- 楽天メディカル. 楽天メディカル、AACR 2024でCOX-2選択的阻害薬がアルミノックス治療(光免疫療法)に伴う浮腫を軽減しうるとするマウス研究の結果についてポスター発表; 2024年4月12日 https://rakuten-med.com/jp/news/press-releases/2024/04/12/8541/
頭頸部アルミノックス治療について
本治療は、医薬品「アキャルックス®点滴静注250㎎」と医療機器レーザ装置「BioBlade®レーザシステム」を用いた治療法です。同医薬品は、頭頸部のがん細胞の表面に多くあらわれるたんぱく質に特異的に集積する抗EGFR抗体と光感受性物質である色素「IRDye® 700DX」(以下、IR700)で構成されています。同医薬品を投与し、レーザ光を当てることでIR700が反応し、がん細胞を選択的に死滅させます。これらの製品は、2020年9月に世界に先駆けて日本で「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能・効果とする製造販売承認を取得し、2021年1月より本治療の提供が開始されました。全国約180か所の耳鼻咽喉科・頭頸部外科と歯科口腔外科における約450名の治療医によって提供可能となり、累計900回以上の治療が実施されました(2025年5月末時点)。
国立大学法人東京科学大学病院について
東京科学大学病院は、1928 年 10 月に日本で初めての官立歯科医学教育機関として設置されました。学問と教育の聖地である湯島・昌平坂において、 医学と歯学の融合を通じて、先進的な医療の実践に従事する日本で唯一の医療系総合大学院大学として「知と癒しの匠」を創造し、人々の健康と社会の福祉に貢献しております。また、2024 年 10 月には東京医科歯科大学と東京工業大学が統合し、「Institute of Science Tokyo(東京科学大学)」が誕生しました。「『科学の進歩』と『⼈々の幸せ』とを探求し、社会とともに新たな価値を創造する」をMissionに掲げ、両大学のこれまでの伝統と先進性を生かしながら、どの大学もなしえなかった新しい大学の在り方を創出していきます。https://www.tmd.ac.jp/
楽天メディカル株式会社について
楽天メディカルは、アルミノックス™プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカルは、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社を構える米国に加え、日本、台湾、スイス、インドの世界5カ国/地域に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、Rakuten Medical, Inc.(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/をご覧ください。
頭頸部(とうけいぶ)がんについて
日本では、年間約47,000人*の方が頭頸部がんを発症しています。頭頸部がんとは、頭から鎖骨までの範囲に含まれるがんの総称です(脳と目は除く)。頭頸部は大きく分けて鼻、口腔、咽頭、喉頭といった器官で構成されており、発生部位により、咽頭がん(上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん)、喉頭がん(声門がん、声門上がん、声門下がん)、鼻腔・副鼻腔がん(上顎洞がんなど)、口腔がん(舌がんなど)、唾液腺がん、甲状腺がんなどの診断名がつきます。この頭頸部と呼ばれる部位には、呼吸や嚥下など人間が生きるうえで必要な機能、さらには発声、味覚、聴覚など日常生活に重要な機能が集中しています。これらに障害が起きるとQuality of Life (QOL: 生活の質)に影響を及ぼすため、がんを治すための根治性とQOLの両立を目指した治療法が必要とされています。
*厚生労働省健康局がん・疾病対策課「令和3年全国がん登録 罹患数・率 報告」付表1.罹患数 口唇~その他および部位不明確の口唇、口腔および咽頭、鼻腔および中耳、副鼻腔、喉頭、甲状腺の合計値
アキャルックス®点滴静注250㎎について
アキャルックス®点滴静注250㎎は、キメラ型抗ヒト上皮成長因子受容体 (EGFR) モノクローナル抗体 (IgG1) であるセツキシマブと光感受物質である色素IRDye® 700DX を結合させた抗体-光感受性物質複合体からなる点滴静注用の注射剤です。アルミノックス™プラットフォームを基に開発された最初の医薬品で、一般名はセツキシマブ サロタロカンナトリウム (遺伝子組換え) です。
BioBlade®レーザシステムについて
BioBlade®レーザシステムは、アキャルックス®点滴静注250㎎と組み合わせて使用するレーザ装置です。レーザシステムは、レーザ装置(BioBlade®レーザ、BioBlade®レーザ WR)、必要な付属品、ディフューザー、およびニードルカテーテルにより構成されます。ディフューザーは、照射を行うための補助器具で、光ファイバーの前方から照射を行う表面照射用のフロンタルディフューザー、光ファイバー端部より側方へ照射を行う表面照射用のサイドファイヤーディフューザー、および光ファイバー端部より円周方向に照射を行う組織内照射用のシリンドリカルディフューザーの3種類があります。BioBlade®ディフューザー用ガイド管は、湾曲することが可能でフロンタルディフューザーやサイドファイヤーディフューザーを照射部位まで誘導するために使用します。ニードルカテーテルは、組織内治療において、シリンドリカルディフューザーを導入するために使用します。
【本研究に関するお問い合わせ先】
東京科学大学病院 頭頸部外科 岡田 隆平 Email: [email protected]