―頭頸部がんに対する本治療の治療手技と、有効性・安全性との関連についてのリアルワールドデータ解析―
Rakuten Medical, Inc.(本社:米国 カリフォルニア州 サンディエゴ、CEO:前田 陽/以下、楽天メディカル)は、頭頸部アルミノックス治療(※1、光免疫療法/以下、本治療)の治療手技最適化を評価した新たなデータが、7月18日~22日に米国マサチューセッツ州ボストンで開催された2026年米国頭頸部学会(AHNS)年次学術集会でポスター発表されたことをお知らせします。
本ポスターでは、「切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部癌患者を対象としたアキャルックス®およびBioBlade®レーザシステムによる頭頸部アルミノックス治療の有効性および安全性に関する観察研究」(jRCT番号:jRCT1041210120/以下、ASP-1929-401試験)の探索的解析結果が報告されています。本解析では、切除不能な局所進行または再発頭頸部がん患者を対象として、本治療の治療手技が有効性および安全性に与える影響を評価しました。
ASP-1929-401試験の研究代表医師であり、本ポスターの発表者を務めた愛知県がんセンター 副院長兼頭頸部外科部長の花井 信広 医師は、次のように述べています。「光免疫療法は、頭頸部がんに対する保険治療として世界で初めて日本で承認・導入され、この5年間で貴重なリアルワールドでの臨床経験が蓄積されてきました。本研究は、治療手技の違いが臨床成績に影響を及ぼす可能性を示唆しており、実臨床における治療最適化に向けた知見を提供するものです。これらの結果が、日本のみならず世界各国における今後の臨床研究にも役立つことを期待しています」
ポスター発表の概要
タイトル:Investigation of Treatment Procedure to Optimize Photoimmunotherapy for Head and Neck Cancer
演者:花井 信広 医師(愛知県がんセンター)
ポスター:ポスターPDFリンク
演題番号: P224
主な発表内容:
有効性
有効照射範囲について、①従来想定されていたフロンタルディフューザー(Frontal Diffuser:FD): 深さ10mm、シリンドリカルディフューザー(Cylindrical Diffuser:CD) :半径10mmと、②本治療経験を有する医師の臨床的知見に基づき設定されたFD:深さ5mm、CD:半径7mmの、2つの設定で、腫瘍体積減少率に基づく照射病変ごとの有効性を比較した。毎回のレーザ光照射で腫瘍全体を完全にカバーした腫瘍と、1回でも不完全なカバーであった腫瘍を比較した結果は以下の通りであった。
- 設定①:完全奏効率 (Complete Response rate:CR rate)は42.9%であり、腫瘍反応(※2)では良好な傾向が見られた。
- 設定②:CRは58.6% であり、腫瘍反応(※2)は有意に良好であった(p=0.0065)。
- この結果は、腫瘍全体を十分にカバーした照射、かつ有効照射範囲をより狭く設定した照射を行うことで、より高い抗腫瘍効果が得られる可能性を示唆している。
有効照射範囲イメージ(従来の想定と臨床的知見に基づき仮定された照射範囲)
引用:AHNS 2026 Immunotherapy / Systemic Therapy P224
安全性
重度の出血、気道閉塞、瘻孔などの重大な転帰に至る治療関連有害事象や機能障害の発現リスクについて、治療前画像から予測可能なケースと予測困難なケースの両方が認められた。本解析結果から、これらの事象の発現リスクを最小化するためには、治療計画時に腫瘍と周囲解剖学的構造との位置関係を評価することが不可欠であることを示している。さらに、治療前画像のみでは発現リスクを十分に予測できないケースがあるため、患者さんへの適切なリスク説明と慎重な観察が重要である。
背景
ASP-1929(セツキシマブ サロタロカンナトリウム)を用いた光免疫療法は、上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor: EGFR)を発現する腫瘍細胞を標的とし、波長690 nmのレーザ光を局所的に照射することで薬剤を活性化させ、がんを死滅させる治療法です。
ASP-1929を用いた頭頸部がんに対する光免疫療法の臨床試験1,2では、臨床的に意義のある抗腫瘍効果と許容可能な安全性プロファイルが示されています。日本では、薬剤「アキャルックス®点滴静注250㎎」(ASP-1929)、およびレーザ装置「BioBlad®レーザシステム」が、「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能または効果として、2020年に製造販売承認を取得しています。
ASP-1929-401試験では、腫瘍体積減少率による照射病変ごとの全奏効率(Overall Response Rate:ORR)60.8%、疾患制御率(Disease Control Rate:DCR)95.9%であり、臨床的に意義のある治療効果が認められました3。安全性プロファイルもこれまで実施された臨床試験の結果と一致していました³。
しかし、照射方法が、有効性や安全性にどのような影響を及ぼすかについては、これまで十分に明らかになっていませんでした。
そこで本研究では、2つの有効照射範囲の仮説に基づき、腫瘍全体のカバーの有無と有効性との関係を評価するとともに、治療前画像を用いて、重大な転帰に至る治療関連有害事象(TRAEs)や機能障害が発現するリスクを予測できるかを検討しました。
試験概要
ASP-1929-401試験は非盲検観察研究です。2021年1月から2022年9月までに、実臨床下で頭頸部アルミノックス治療を開始した77例(24施設)が登録されました。
評価項目:
- 主要評価項目: 腫瘍体積減少率により測定した、レーザ光照射病変ごとの抗腫瘍効果
- 主な副次評価項目: 治療関連有害事象の発現率
- 主な探索的評価項目: 頭頸部アルミノックス治療の手技が有効性および安全性に与える影響
データレビュー委員会(Data Review Board)による判定
データレビュー委員会(Data Review Board)は、結果を盲検化した状態で、有効性については設定した有効照射範囲に基づく、レーザ光照射による腫瘍全体のカバーの有無を、安全性についてはアキャルックス®の「適正使用ガイド補足資料」に記載された留意事項に基づき、重度の出血、気道閉塞、瘻孔などの重大な転帰に至る治療関連有害事象や機能障害の有無を判定しました。
※1:日本では「アキャルックス®」と「BioBlad®レーザシステム」を用いた「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」に対する治療法を「頭頸部アルミノックス治療」と呼称しています。
※2:「腫瘍反応」は、腫瘍体積減少率による照射病変ごとの効果(完全奏効、部分奏効、病勢安定、病勢進行)を指します。
ASP-1929について
楽天メディカルがアルミノックス®プラットフォームを基に開発した最初の薬剤であるASP-1929(一般名:セツキシマブ サロタロカンナトリウム)は、抗EGFR抗体であるセツキシマブに光感受性物質である色素IRDye® 700DXが結合した抗体-光感受性物質複合体で、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に集積することが確認されています。EGFRは、頭頸部がん、乳がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん、すい臓がんなど様々な種類の固形がんに発現していることが知られています。ASP-1929ががん細胞に集積した後、波長690 nmのレーザ光を専用のレーザ照射システムを用いて照射することにより、ASP-1929が局所的に励起され光化学反応を起こします。これにより細胞膜が傷害されたがん細胞が選択的に壊死すると考えられています。日本において、先駆け審査指定制度の対象品目として指定され、かつ条件付き早期承認制度の適用のもと申請を行い、2020年9月に「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能または効果とする製造販売承認を厚生労働省から取得しています。日本以外の規制当局による製造販売承認は受けておりません。また、本剤を用いたアルミノックス治療(光免疫療法)と抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブとの併用療法について、再発頭頸部扁平上皮がんに対する一次治療としての有効性・安全性を検討する国際共同第Ⅲ相臨床試験を実施しています。
アルミノックス®プラットフォームについて
アルミノックス®プラットフォームは、治療技術基盤の名称であり、米国国立がん研究所の小林久隆先生らが開発したがん光免疫療法が基となっています。同プラットフォームは、医薬品、医療機器、医療技術、その他周辺技術を総合的に利用した技術基盤であり、楽天メディカルは、これに基づき製品や治療法の開発を進めています。同プラットフォームを用いた治療は、「薬剤の投与」と「光の照射」の 2 段階で構成されます。薬剤は、光感受性物質 (光に反応する物質) と、キャリア (特定の細胞に選択的に集積する成分) から組成される複合体です。同薬剤を投与し、特定の細胞に選択的に集積させた後、その細胞に特定の光を照射することで光感受性物質を活性化させ、生化学・物理学的プロセスにより、特定の細胞を壊死させ、あるいは、排除します。
楽天メディカルについて
楽天メディカルは、アルミノックス®プラットフォームと呼ぶ技術基盤を基に、薬剤と光を組み合わせた、がんをはじめとした様々な疾患に対する新しい治療法の開発および販売を行うグローバルバイオテクノロジー企業です。同プラットフォームを基に開発した医薬品・医療機器の非臨床試験(非公開データ)では、特定の細胞の選択的な壊死が確認されています。楽天メディカルは、世界中の一人でも多くの患者さんに、一日でも早く、私たちの革新的な治療法をお届けすることにより「ガン克服。」というミッションの実現を目指しています。本社を構える米国に加え、日本、台湾、スイス、インドの世界5カ国/地域に拠点を有しています。楽天メディカル株式会社は、Rakuten Medical, Inc.(米国法人)の日本法人です。詳しくは、https://rakuten-med.com/jp/をご覧ください。
参考:
- Cognetti DM et al. Head Neck. 2021;43:3875–87
- Tahara M et al. Int J Clin Oncol. 2021;26:1812–21
- 篠﨑 剛ほか. 頭頸部アルミノックス治療(光免疫療法)の多施設共同観察研究における照射病変毎の有効性及び安全性の検討, 第34回日本頭頸部外科学会, 2025年1月